来世に期待します〜出涸らし令嬢と呼ばれた私が悪い魔法使いに名を与えられ溺愛されるまで〜

「幸せな今世を、ありがとうございました」

 彼女はそう言って、ふわりとほほ笑んだ。

 たくさん笑った。
 たくさん家族ができた。
 たくさん愛をもらった。
 幸せな日々を生きた。


 時は巡り、彼女が旅立つ時が来た。

 痛み無く、苦しみなく、楽に。
 最後に彼女の目に映るのは、愛する人の赤い瞳。
 いつか彼女が望んでいた通りだ。

 幸せそうな顔をして、彼女は悪い魔法使いの魔法によって旅立った。


 そんな彼女の最後の言葉は、


「来世に()、期待しています──」

 そして悪い魔法使いもまた、彼女の手にそっと触れると、静かに目を閉じた。
 

 END

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