来世に期待します〜出涸らし令嬢と呼ばれた私が悪い魔法使いに名を与えられ溺愛されるまで〜
Sideオズ
今日のセシリアはどこか変だ。
いや、俺が町へ誘った際には嬉しそうになぜか気合の入った返事をしていたが、町に行ってから徐々にどこか心がついてきていないような、いつもの彼女らしい笑みがなくなってしまった。
だが、思い当たる節が全くない。
トレンシスの町の者たちともいつも通り会話をしていたし、トラブルもなかったはず。
一体どうしたというのか……。
「ねえ、セシリア、なんだか変じゃなかった?」
「うん。何か変だった。二人で出ていって一人で帰ってくるなり厨房に閉じこもって料理を始めてたから、何か張り切って作りたいものでもあるのかと思えば、珍しく失敗してるし」
料理上手な彼女にしては珍しいことだ。
いや、初めてなんじゃないかとも思う。
「オズ、あんた何かセシリアにやらかしたんじゃないの?」
「そうそう。婚約したからって調子に乗って夜這いかけたり──」
「するか!!!!」
何を言い足すかと思えばこのモンスターどもめ……。
「俺は婚約してからも節度を持って、いつもと同じ、いや、それ以上に気を付けているつもりだ。距離だって近くなりすぎないよう、少し距離を開けて歩くようにしているし……」
何しろ歯止めをきかせられる自信がないんだ。
セシリアのためにも、普段から自制するしかない。
俺の言葉を受け、まる子とカンタロウが動きをぴたりと止めた。
そしてなぜか、信じられない、といった様子で俺を凝視する。
「それじゃない? 原因……」
「…………は?」
原因がそれ、とは?
「それとはなんだ」
「いやだから、いつも以上に気を付けてるとか、距離云々とか……そういうのよ。そういや最近頭を撫でたりするシーンを見ることが無いと思えば……はぁ、これだから恋愛初心者は……」
それの何が問題なのだろうか。
間違いを犯さぬよう配慮しているつもりだ。
自分の中の思いが溢れて止められなくなっては、セシリアを傷つけてしまうかもしれないのだから。
「オズたちってさ、年の割には枯れてるっていうか、二人とも落ち着いているだろう? ただでさえ普通の恋人同士よりも距離があるのに、これ以上距離明けたらさぁ……」
「恋人、ではないわよね。喧嘩でもしてセシリアが避けられているようにも見えるわよ」
避ける!?
「俺はそんな気は──」
「そうよね、でもあんたはその気はなくても、セシリアは違うんじゃない? 普通の女の子みたいに二人でデートしたりして、楽しく過ごしたいと思ってても不思議じゃないわよ」
「っ……」
何も言えない。
ただでさえ自己肯定感の低いセシリアだ。
自分なんて、と思って不安になっていてもおかしくはない。
「まったく、恋愛初心者同士は世話が焼けるんだから」
呆れたようにカンタロウが言ったが、俺の頭の中はもうそれどころではなかった。
「……食器、片づけてくる」
俺はワゴンに食べ終わった皿を移すと、それをもって厨房へと足を向けた。
今日のセシリアはどこか変だ。
いや、俺が町へ誘った際には嬉しそうになぜか気合の入った返事をしていたが、町に行ってから徐々にどこか心がついてきていないような、いつもの彼女らしい笑みがなくなってしまった。
だが、思い当たる節が全くない。
トレンシスの町の者たちともいつも通り会話をしていたし、トラブルもなかったはず。
一体どうしたというのか……。
「ねえ、セシリア、なんだか変じゃなかった?」
「うん。何か変だった。二人で出ていって一人で帰ってくるなり厨房に閉じこもって料理を始めてたから、何か張り切って作りたいものでもあるのかと思えば、珍しく失敗してるし」
料理上手な彼女にしては珍しいことだ。
いや、初めてなんじゃないかとも思う。
「オズ、あんた何かセシリアにやらかしたんじゃないの?」
「そうそう。婚約したからって調子に乗って夜這いかけたり──」
「するか!!!!」
何を言い足すかと思えばこのモンスターどもめ……。
「俺は婚約してからも節度を持って、いつもと同じ、いや、それ以上に気を付けているつもりだ。距離だって近くなりすぎないよう、少し距離を開けて歩くようにしているし……」
何しろ歯止めをきかせられる自信がないんだ。
セシリアのためにも、普段から自制するしかない。
俺の言葉を受け、まる子とカンタロウが動きをぴたりと止めた。
そしてなぜか、信じられない、といった様子で俺を凝視する。
「それじゃない? 原因……」
「…………は?」
原因がそれ、とは?
「それとはなんだ」
「いやだから、いつも以上に気を付けてるとか、距離云々とか……そういうのよ。そういや最近頭を撫でたりするシーンを見ることが無いと思えば……はぁ、これだから恋愛初心者は……」
それの何が問題なのだろうか。
間違いを犯さぬよう配慮しているつもりだ。
自分の中の思いが溢れて止められなくなっては、セシリアを傷つけてしまうかもしれないのだから。
「オズたちってさ、年の割には枯れてるっていうか、二人とも落ち着いているだろう? ただでさえ普通の恋人同士よりも距離があるのに、これ以上距離明けたらさぁ……」
「恋人、ではないわよね。喧嘩でもしてセシリアが避けられているようにも見えるわよ」
避ける!?
「俺はそんな気は──」
「そうよね、でもあんたはその気はなくても、セシリアは違うんじゃない? 普通の女の子みたいに二人でデートしたりして、楽しく過ごしたいと思ってても不思議じゃないわよ」
「っ……」
何も言えない。
ただでさえ自己肯定感の低いセシリアだ。
自分なんて、と思って不安になっていてもおかしくはない。
「まったく、恋愛初心者同士は世話が焼けるんだから」
呆れたようにカンタロウが言ったが、俺の頭の中はもうそれどころではなかった。
「……食器、片づけてくる」
俺はワゴンに食べ終わった皿を移すと、それをもって厨房へと足を向けた。