恋とか、愛とか
私の日常
運命の相手、とか永遠の愛なんてこの世になんかきっと存在しない。
神様に誓ったとしてもすぐに忘れてしまうんだ。
「今日のご飯代ね」
パサッとテーブルの上に置かれた一万円札。それを見た後に顔を上げると、今にも鼻歌を歌いそうなくらい上機嫌な母親が朝から綺麗な格好をして姿見で身嗜みを確認していた。
「あの人も出張で帰ってこないらしいから。それで好きに食べなさい」
「・・・分かった」
「じゃあね」
派手なバックを持って、派手な化粧をして母親は家を出て行った。
行き先は、今付き合っている男のところ。
さっき言っていたあの人とは、父親のこと。出張と言っていたが、きっと付き合っている女と旅行でも行っているのだろう。
母親が出て行って、家は一気に静かになった。
母親も父親もそれぞれ愛人がいる。
恋愛して、神様の前で愛を誓い合ったはずなのに、今じゃお互い別の人と共にいることを選んだ。世間体っていうものを気にして離婚はせずに仮面夫婦を演じながら、子どもである私はこの家に置いてけぼり。毎日お金は貰えるから飢えることはないが、私の存在は2人にとってただ養う対象というだけ。
たまに、2人揃って家にいても会話なんてないし、私は認識されてるのか分からない。あぁ、親戚の集まりでは仲良し家族アピールはするな。その時くらいかな、私を見てくれるのは。
張りぼてだらけの家族。
なんで、結婚なんかしたんだろう。
なんで、私なんか産んだんだろう。
聞けない私は臆病者だ。
「----はぁ」
テーブルに置かれた一万円札を自分の財布にいれる。財布の中はあまりお金を使わないのでもらったお金が溜まっていく一方。
お金はあるにこしたことないからいいけど。
「今日、どうしようかな・・・」
スマホを出してSNSを開く。
ズラリと並んだ会話の履歴の中から、適当にタップして会話画面を開く。
タタタッと指を動かしてメッセージを打って送信、返事を待つ。
少しして返事が来て、色良い返事が返ってきたことを確認してから私も家を出た。
高校2年生。それが私、久利生ゆゆだ。
家から通える適当な高校を選んで入学して2年。
校則通りに来た制服に、真っ黒な髪は耳の下で二つに結び、地味なメガネを掛けている。
どこから見ても地味で無口で何を考えているのか分からない友だちなんていない女子高生。
クラスにいても空気みたいな存在。
それが学校での私だった。