「ちょ、俺が救世主!?」~転生商人のおかしな快進撃~
83. 不器用な男
俺は大きく息をつく……。胸の奥で複雑な感情が渦巻いていた。
そっと隣に腰を下ろし、優しく声をかける。
「どうしたの? いきなり……」
「……」
うつむいたまま動かないドロシー。その沈黙が、胸に重く圧し掛かかる。
「ちょっと飲みすぎちゃったかな? 今日はハイペースだったし……。レヴィアとか本当にオカシイよね」
軽く冗談を交えながら、彼女の心を解きほぐそうとする。
「王女様……放っておいちゃダメじゃない……」
ドロシーが小声でつぶやく。その声には、かすかな嫉妬の色が混ざっているように感じられた。
「ドロシーを放ってもおけないよ」
俺の言葉に、ドロシーの肩がわずかに震えた。
「不満……無いんでしょ? 良かったじゃない。王国一の美貌、羨望の的だわ」
その言葉には、自分を卑下するような響きがあった。
「あれは言葉のアヤだって」
必死に弁解する俺。しかし、ドロシーの心の奥底にある不安は、簡単には消えそうになかった。
「私なんて放っておいて下行きなさいよ!」
突如として強い口調で言い放つと、俺のことをドンと押す。
その声に、悲痛な響きを感じる。
俺はドロシーの小さな手を優しく包み込むように取った。
「俺にとって……一番大切なのはドロシーなんだ。ドロシーおいて下なんて行けないよ」
「嘘! 身寄りのない孤児と王族、比べるまでもないわ!」
ドロシーはギュッと目をつぶって言い放つ。
俺は大きくため息をつく――――。
こんな時、女性経験の浅い自分にはかける言葉が見つからない。
「なぁ、ドロシー……」
そう言ってはみたが、続く言葉がどうしても出てこなかった。
俺は頭をかきむしる。
くぅぅぅ……。
「俺は不器用な人間だから上手く言葉にできない。でも、今の俺がいるのはドロシーのおかげなんだよ」
「私なんて何もやってないわ……」
「俺が最初の剣を研いでいた時、ドロシーが古銭を使ってすごい発見をしてくれたじゃない? あれが無かったら今の俺はないんだよ。まさにドロシーは俺にとって幸運の女神、身分なんてどうでもいいんだ。ドロシーは女神、輝いているんだよ」
「……。本当?」
恐る恐る顔を上げるドロシー。その瞳には、縋るような光が灯っていた。
「本当さ、そうでなければ追いかけてなんて来ないだろ?」
俺はキュッと手を握り、ドロシーに微笑みかける。
ドロシーは涙をいっぱいにたたえた目で俺を見つめた。透き通るような肌が月明かりに照らされ、その姿は妖精のような美しさを放っている。
綺麗だ……。深い愛おしさが胸の奥底から湧き上がってくる。
俺はそっと頭をなでた。ドロシーの体が僅かに震える。
次の瞬間、いきなりドロシーが抱き着いてくると、くちびるを重ねてきた――――。
突然の行動にテンパってしまって固まってしまう俺。
しかし、その熱く情熱的な舌の動きに、俺も自然と応えてしまう。
甘い吐息を吐きながら俺を求めてくるドロシー。その仕草には、初々しさと大胆さが同居していた。
負けじと俺も舌を絡め、手は彼女の背中をまさぐる。その細い背中からは、想像以上の熱が伝わってくる。
月の青い光の中で俺たちは舌を絡め合わせ、しばらくお互いをむさぼった……。時間の感覚が失われ、ただ二人の存在だけが世界の全てのように感じられた。
「うふふ……ユータ……好き」
くちびるを離すと、ドロシーは俺をギュッと抱きしめる。その声には、幸福感と安堵が溢れていた。
俺はドロシーを抱きしめ、豊かな胸のふくらみから熱い体温を感じる。心臓がドクドクと早打ちし、このまま押し倒してしまいたい衝動にかられた。全身の血が沸き立つような感覚に包まれる。
しかし……このまま行為に及ぶわけにもいかない。理性が必死に欲望を抑え込もうとする。
くぅぅぅ……。
俺が激しく欲望と戦っていると……、スースーと寝息が聞こえてくる。どうやら寝てしまったようだ。よく考えたら、ドロシーは飲み過ぎなのだ。
ふぅっと大きくため息をつき、じっとドロシーを見つめる。
その寝顔は、まるで天使のように穏やかで美しかった。
俺はホッとしつつ……、「くぅっ!」っとこぶしを握って宙を仰ぐ。
このやりきれない思いをどうしたらいいのか、持てあましていた。欲望と理性の間で揺れ動く心を、必死に落ち着かせようと俺はあがくしかない。
ドロシーをそっとベッドに横たえ、毛布を掛ける。
幸せそうな顔をしながら寝ているドロシーをしばらく見つめた――――。
「おやすみ……」
俺はそっと頬にキスをすると、俺は下へと降りて行った。階段を下りる足取りは重く、複雑な思いを抱えたまま、再び宴の場へと戻っていくのだった。
そっと隣に腰を下ろし、優しく声をかける。
「どうしたの? いきなり……」
「……」
うつむいたまま動かないドロシー。その沈黙が、胸に重く圧し掛かかる。
「ちょっと飲みすぎちゃったかな? 今日はハイペースだったし……。レヴィアとか本当にオカシイよね」
軽く冗談を交えながら、彼女の心を解きほぐそうとする。
「王女様……放っておいちゃダメじゃない……」
ドロシーが小声でつぶやく。その声には、かすかな嫉妬の色が混ざっているように感じられた。
「ドロシーを放ってもおけないよ」
俺の言葉に、ドロシーの肩がわずかに震えた。
「不満……無いんでしょ? 良かったじゃない。王国一の美貌、羨望の的だわ」
その言葉には、自分を卑下するような響きがあった。
「あれは言葉のアヤだって」
必死に弁解する俺。しかし、ドロシーの心の奥底にある不安は、簡単には消えそうになかった。
「私なんて放っておいて下行きなさいよ!」
突如として強い口調で言い放つと、俺のことをドンと押す。
その声に、悲痛な響きを感じる。
俺はドロシーの小さな手を優しく包み込むように取った。
「俺にとって……一番大切なのはドロシーなんだ。ドロシーおいて下なんて行けないよ」
「嘘! 身寄りのない孤児と王族、比べるまでもないわ!」
ドロシーはギュッと目をつぶって言い放つ。
俺は大きくため息をつく――――。
こんな時、女性経験の浅い自分にはかける言葉が見つからない。
「なぁ、ドロシー……」
そう言ってはみたが、続く言葉がどうしても出てこなかった。
俺は頭をかきむしる。
くぅぅぅ……。
「俺は不器用な人間だから上手く言葉にできない。でも、今の俺がいるのはドロシーのおかげなんだよ」
「私なんて何もやってないわ……」
「俺が最初の剣を研いでいた時、ドロシーが古銭を使ってすごい発見をしてくれたじゃない? あれが無かったら今の俺はないんだよ。まさにドロシーは俺にとって幸運の女神、身分なんてどうでもいいんだ。ドロシーは女神、輝いているんだよ」
「……。本当?」
恐る恐る顔を上げるドロシー。その瞳には、縋るような光が灯っていた。
「本当さ、そうでなければ追いかけてなんて来ないだろ?」
俺はキュッと手を握り、ドロシーに微笑みかける。
ドロシーは涙をいっぱいにたたえた目で俺を見つめた。透き通るような肌が月明かりに照らされ、その姿は妖精のような美しさを放っている。
綺麗だ……。深い愛おしさが胸の奥底から湧き上がってくる。
俺はそっと頭をなでた。ドロシーの体が僅かに震える。
次の瞬間、いきなりドロシーが抱き着いてくると、くちびるを重ねてきた――――。
突然の行動にテンパってしまって固まってしまう俺。
しかし、その熱く情熱的な舌の動きに、俺も自然と応えてしまう。
甘い吐息を吐きながら俺を求めてくるドロシー。その仕草には、初々しさと大胆さが同居していた。
負けじと俺も舌を絡め、手は彼女の背中をまさぐる。その細い背中からは、想像以上の熱が伝わってくる。
月の青い光の中で俺たちは舌を絡め合わせ、しばらくお互いをむさぼった……。時間の感覚が失われ、ただ二人の存在だけが世界の全てのように感じられた。
「うふふ……ユータ……好き」
くちびるを離すと、ドロシーは俺をギュッと抱きしめる。その声には、幸福感と安堵が溢れていた。
俺はドロシーを抱きしめ、豊かな胸のふくらみから熱い体温を感じる。心臓がドクドクと早打ちし、このまま押し倒してしまいたい衝動にかられた。全身の血が沸き立つような感覚に包まれる。
しかし……このまま行為に及ぶわけにもいかない。理性が必死に欲望を抑え込もうとする。
くぅぅぅ……。
俺が激しく欲望と戦っていると……、スースーと寝息が聞こえてくる。どうやら寝てしまったようだ。よく考えたら、ドロシーは飲み過ぎなのだ。
ふぅっと大きくため息をつき、じっとドロシーを見つめる。
その寝顔は、まるで天使のように穏やかで美しかった。
俺はホッとしつつ……、「くぅっ!」っとこぶしを握って宙を仰ぐ。
このやりきれない思いをどうしたらいいのか、持てあましていた。欲望と理性の間で揺れ動く心を、必死に落ち着かせようと俺はあがくしかない。
ドロシーをそっとベッドに横たえ、毛布を掛ける。
幸せそうな顔をしながら寝ているドロシーをしばらく見つめた――――。
「おやすみ……」
俺はそっと頬にキスをすると、俺は下へと降りて行った。階段を下りる足取りは重く、複雑な思いを抱えたまま、再び宴の場へと戻っていくのだった。