すきとおるし
初対面はそれから一ヶ月後の、暑い日だった。
みんなその暑さにやられてぐったりしていて、花織の実家で初美さんから、生前の花織の様子を聞いているときは、慣れない正座で足がやられた。
きんぎょは新しいパンプスで靴擦れを起こし、スーちゃんは日焼けで真っ赤になった肌を気にしていた。
ゆんは黒い上着のせいで尋常じゃないくらい汗をかき、わたしは喪服のタグがチクチクして気になっていた。
何より一番の問題は、実際に遺影を見てもお墓参りをしても、花織の死を実感できなかったということだ。
これはまずい。あっち関係がご無沙汰なばかりに、不感症になってしまったのではないかと不安になって、地元に帰るとすぐに、アダルトサイトに登録して、アダルトビデオを数本購入した。
適当に選んだセール品だったけれど、どれもちゃんと興奮した。良かった、そういう感情はまだ残っているみたいだ。
花織がいなくなってから、みんなの集まりが目に見えて悪くなった。
たまに思い出したように一人二人がボイスチャットルームに顔を出し、小一時間ほど近況を報告し合う。ただそれだけ。わたしは毎晩、誰か来ないかとパソコンの画面を見つめて過ごし、みるみるうちに睡眠時間が減ってしまったから、いつしかパソコンを開くのをやめた。
花織の死はまだ実感できないというのに、状況は変わってしまった。いや、知り合う前に戻ったと言ったほうが正しいのかもしれない。
最初に会ったときにプライベートの連絡先を交換していたので、夏が近付く頃に三人と連絡を取り、一周忌にも集まってお墓参りに行ったけれど、やっぱり何も感じなかった。
どうしてこんなことになってしまったのか。散々考えたけれど、毎晩疲れていつの間にか眠ってしまって、そのうち考えることもやめてしまった。