すきとおるし
目的地――閑静な住宅街にある、青い屋根の一軒家の呼び鈴を鳴らすと、すぐに玄関扉が開いて、満面の笑みの女性が顔を出した。
ショートカットがよく似合う、爽やかで健康的な印象の女性だ。
「縁ちゃん、優輔くん、遠いところをありがとう。さ、入って」
「ご無沙汰してます、初美さん」
この家の住人女性――初美さんに丁寧に頭を下げ、彼女の後に続く。
じりじりと肌を焼き付けた太陽からようやく解放され、ほっと息を吐いた。
玄関を入ってすぐ左手にある和室に、初美さんは「次郎、縁ちゃんと優輔くんが来てくれたよ」と明るい声で言いながら入って行く。
わたしたちもそれに続き、そして一年ぶりに、友人の顔を見た。
爽やかな短髪に、一重まぶたの目。右の口角を持ち上げて笑う青年。友人は去年、一昨年と全く同じ、少し癖のある笑顔で、わたしたちを迎えた。
「来たよ、花織……」
そう呟いて、仏前に座る。やっぱり笑顔の遺影はいい。暗い気分を和らげてくれる。
たとえそれが、全く見覚えのない人物のものだったとしても。