『46億年の記憶』  ~新編集版~
「しんど」

 いきなり関西弁かい! 
 ロマンティックな言葉を期待していたわたしはガッカリするというよりも頭にきたが、彼の疲れ切った表情を見て気持ちを立て直した。
 
「お疲れ様」

 精一杯の笑顔で労うと、
「東京の人?」と首を傾げた。

「そうなの。神田の生まれよ。ちゃきちゃきの江戸っ子なの」

 思い切り胸を張ると、
「恐れ入谷(いりや)鬼子母神(きしぼじん)
 とまったく恐れ入っていない表情で見つめたので、思わずイラっとした声が出てしまった。
 
「他に言うことはないの?」

 するといきなり彼が居ずまいを正した。

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