『46億年の記憶』 ～命、それは奇跡の旅路～ 【新編集版】

　10月15日、日本政府がチャーターした飛行機が羽田空港に着陸し、タラップから拉致被害者が下りてきた。
　一人、二人、三人、四人、五人。
　一時帰国とはいえ、拉致被害者が帰ってきたのだ。
　出迎えた親族や支援者たちから歓声が沸き起こった。
　テレビの前に座って実況を見ていた人たちも手を叩いて喜んだ。
　しかし、その中にめぐみさんはいなかった。
　彼女は帰ってこなかったのだ。
　滋さんと早紀江さんはどんな思いで見つめていたのだろう。
　めぐみさんと同じように拉致された人たちの帰国を喜びながらも、敵わなかった娘への想いが交差した複雑な心境だったに違いない。
　それでも、これをきっかけにして第二弾、第三弾の帰国が実現するという希望が大きくなってきたのは確かだった。
　次こそ必ずめぐみは返ってくる。
　滋さんと早紀江さんはそう強く信じた。