『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
 ところで、ペストの病原菌が発見されたのがいつか知ってる? 
 
 知らないのね。
 じゃあ教えてあげるわ。
 時は1894年6月14日、当時流行していた香港で発見されたのよ。
 
 発見した人は、なんと日本人だったの。
 北里柴三郎(きたさとしばさぶろう)さん。
 同じ日本人として誇らしいわね。
 これによって累計1億人以上の死者が出たペストの正体がわかって、予防や消毒、治療の道が開けたのよ。
 そして、抗生物質の登場によって、治癒することが可能になったの。
 
 ところでね、わたしのパパのご先祖様は北里博士の教え子なんだって。
 直接指導をしてもらったらしいの。
 その血がパパにも流れているから、迷わず医師の道に進んだんだって。
 もちろん、わたしにもその血が流れているから、病気と闘うという使命を持っているかもしれないわね。
 やっぱり将来は医師かな? 
 それとも、薬学の研究者かな? 
 それとも、WHOの事務局長かな? 
 どれも魅力的だけど、まだ決められないわね。
 でも、いつか特別な声が導いてくれるはずだから、それまでは生まれるための準備を着々と進めるわね。

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