『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
 で、わたしの体に関して言うとね、
 今ね、骨がどんどん出来てきているのよ。
 細胞が成長して骨芽細胞(こつがさいぼう)になってそれが骨になっているの。
 体を支える背骨が輪状の33本の骨と150くらいの関節と1,000本くらいの靱帯(じんたい)によって出来上がっているの。
 かなりしっかりと体を支えることができるようになったのよ。
 だから、背をまっすぐに伸ばすことができるようになったの。
 でもね、ある場所だけ骨化が進んでいないところがあるの。
 どこだと思う?

 わからない?
 では、教えてあげるね。
 それは、頭蓋よ。
 これには理由があるの。
 生まれて来る時、わたしは母体の狭い産道を通っていくことになるんだけど、その時に頭蓋骨が出来上がっていると通りにくくなって、出産に支障をきたすからなの。
 だから、頭蓋骨は引っつかないで、産道の狭さに対応して柔軟に変形できるようになっているのよ。
 それに、脳が成長するためにも頭蓋が柔軟であることが大切なの。
 だって生まれてから1年で赤ちゃんの脳は3倍にも大きくなるから、頭蓋骨が邪魔をしたら脳の発達が遅れてしまうのよ。
 そんなことになったら大変だから、生まれてからも柔らかいままなの。
 いろんな理由があって頭蓋骨を未完成にさせているのよね。
 人体の不思議に今更ながら感動しちゃうわ。
 それと、特別な使命を果たすためにわたしの脳はアインシュタインよりも大きくなるはずだから、わたしの頭蓋は普通の人よりもゆっくり骨化していくと思うの。
 将来の天才誕生の邪魔をしないように頭蓋骨が気を遣っているのよ。
 ありがとう、頭蓋骨さん。


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