『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
 赤ちゃんが寝たので、真理愛が入れてくれたハーブティーを二人で楽しんだ。

「これ、美味しいわね」

 考子はほっこりとした表情になった。

「そうでしょう。私の大好きなローズヒップよ。妊娠中も良く飲んでいたの」

「ハーブはカフェインが入っていないから安心して飲めるって聞いたことがあるわ」

 考子が聞きかじりを口にすると、真理愛は少し首を傾げた。

「そうでもないのよ。飲まない方がいいハーブティーもあるの」

「えっ⁉」

 考子は思わず大きな声を出して、目を丸くした。

「そんなに驚かないでよ。こっちがびっくりするじゃないの。それに、赤ちゃん大丈夫かな」

 心配そうな顔になった真理愛はベビーベッドを覗きに行った。
 しかし、少しして戻ってくると、大丈夫よ、というように目配せをした。
 すやすやと眠っていたようだ。
 
「よかった」

 安心しながらも考子が、ごめんなさい、と顔の前で両手を合わせると、真理愛は、いいのよ、というように微笑んで、中断したハーブティーの話を続けた。

「妊娠中、カフェインは胎盤から胎児に入っていくって聞いたから、コーヒーは止めてハーブティーにしていたんだけど、ハーブティーの中には子宮を収縮させる作用があるものもあるから気をつけた方がいいって言われたの」

「誰から?」

「産婦人科の先生からよ」

「えっ、産婦人科医?」

 そんなことを聞いたことがなかった考子は頭の中で新を小突いたが、「それでね、飲んでもいいものリストを貰って、その中から自分の好きな香りのものを選んでいったの」という真理愛の声で今に戻った。
 すると、彼女は台所の引き出しからそのリストを持ってきてテーブルに置いた。
 エクセルの表だった。
 左欄がOKなもの一覧、右欄がNGなもの一覧になっていた。
 
「コピーするから持って帰ったらいいわ」

 印刷機のコピー機能を使って刷り上がった1枚を渡してくれた。

「ありがとう。助かるわ。これからも色々教えてね」

 考子は左欄に記載されているローズヒップという文字を見つめながら、穏やかな気持ちでカップを口に運んだ。


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