『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
        わたし 

 あれっ、ゴロゴロって音がしたぞ。
 ママが何か飲んだのかな? 
 もしそうなら、何を飲んだのか知りたいな。
 そしてそれが、おいしいものだったらいいな。
 だって、ママが好きなものがわたしの好きなものになるんだから。
 
 それはそうと、羊水の中にはいろんな味がしみ込んでいるのよ。
 その羊水をいつも飲んでいるから、それが馴染みの味になっているの。
 ミルクやヨーグルト、チーズは大好物になったし、ブロッコリーやほうれん草も大好きになっちゃった。
 たまに食べてくれる牛肉の赤身は待ち遠しいほどよ。
 納豆は最初はちょっと勘弁してって感じだったけど、だんだん慣れてきて、今では平気の平左になっちゃった。
 朝食に食べるイチゴやバナナは大好物になったし、これまでのママの食生活は概ね〇ね。
 
 でも、今日ママが飲んだものは今まで経験していない味だったの。
 なんだろう? て思っていたら、だんだん酸っぱくなってきて、ウソでしょ、勘弁してよ、って顔をしかめちゃった。
 でもね、そのあとで程よい甘さが追いかけてきたの。
 これは何かしらと思案していたら、ハチミツだってことがわかったの。
 ハチミツが少し入って酸味を中和しているみたいなの。
 なるほどね、素晴らしいマリアージュじゃない。
 わたしはお気に入りリストにこの味を入れることにしたわ。


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