『46億年の記憶』  ~新編集版~
 記事には〈出生数の推移〉の表が掲載されており、団塊の世代が生まれた1940年代後半には250万人を超えていたこと、その後、出生数は右肩下がりが続いたが、団塊ジュニアが生まれる1970年代半ばには200万人台を回復したことが表されていた。
 しかし、それからあとはほぼ一貫して減少を続け、40年以上に渡ってその傾向が続いているのだ。
 しかもここにきて減少率は大きくなっている。
 
「手を打つチャンスは何度もあったのにね」

 新は〈どうしようもないね〉というように両手を広げた。

「確かに自分たちにはどうしようもないことかもしれないけど。でも、このまま放っておいたら大変なことになるわ」

 考子の胸中にぶつけようのない憤りが沸々と湧いてきた。
 
「国は、政治家は、役人は、何をやっていたのかしら!」

 すると新が強く頭を振った。

「無理だよ。彼らは国の将来のことなんて何も考えていないよ。目先のことだけで頭がいっぱいなんだよ。選挙で勝つこと、権力を手にすること、それによって甘い汁を吸うこと、そんなことばかり考えているんだよ。少子化を重大な問題だと認識している政治家は皆無に等しいんじゃないの」

 新の声が虚しく部屋に響いた。

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