『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
        わたし 

 なんか、バタバタしているみたい。
 ママが大変なのかな? 
 ちょっと心配。
 
 あれっ? 
 これって、車の音かしら? 
 もしかして、病院へ行くの? 
 
 ということは……大変だ~、生まれる準備を急がなくっちゃ。
 と思っていたら、自分の体から副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモンが分泌されてきたわ。
 それがどんどんどんどん増えているの。
 ママの体にある下垂体(かすいたい)を刺激してオキシトシンというホルモンを分泌させているのよ。
 子宮を収縮させるためなの。
 
 何故かって? 
 
 それはね、子宮を小さくしてわたしを産道へ押し出してもらわなければならないからなの。
 いつまでも子宮にいるわけにはいかないからね。
 
 もちろん、わたしも頑張っているわ。
 頭をぐりぐりして産道を広げているのよ。
 子宮が収縮する中をぐりぐりするのって大変なんだけど、もっと広がってくれないと動きにくいから、わたし必死なの。

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