『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
 あっ、
 骨盤がゆっくりとだけど柔らかく動いて広がってきたわ。
 ママも応援してくれているのね。
 一心同体っていう言葉が頭に浮かんできて、なんかウルウルしてきちゃった。
 でもね、その余韻に浸っている余裕はないの。
 産道を進みやすくするために姿勢を変えなければならないのよ。
 ここからが大事なところなの。
 顎を胸にピッタリと付けて、頭の一番小さな部分を先端に向けるのよ。
 それから、頭の骨を重ねて頭全体を小さくしていくの。
 狭い産道を通り抜けるためよ。
 産道のカーブに合わせて動きやすくするためでもあるの。
 
 どうしてかって? 
 
 だって産道の入口は横長なのに出口は縦長だから、回転しながら進むしかないのよ。
 頭が大きかったらスムーズには動けないから、できるだけ小さくしなければならないの。
 
 わかった?
 
 あらっ、
 子宮がキュッキュッって締まり始めたわ。
 10分に1回だった収縮が8分に1回になってきた。
 と思ったら、5分に1回になっている。
 どんどん早くなってきたわ。
 それに合わせてわたしの体はどんどん押し出されているの。
 産道を出口に向かって進んでいるのよ。
 もうすぐだわ。
 わたしも頑張るから、ママも頑張ってね!


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