『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
        偵察魂 

「大きく息を吸って~、吐いて~、吸って~、吐いて~」

 助産師の声に合わせて考子は呼吸を整えていた。
 新が手を握ってくれているから気持ちが落ち着いている。
 母体の精神状態が穏やかだと産道が開きやすいと聞いていたから、心の中に不安がないのはとてもありがたい。
 
 陣痛の間隔が狭まってきた。
 赤ちゃんが産道を進んでいるのがわかる。
 
「大きく息を吸って~、吐いて~、吸って~、吐いて~」

 助産師の声が熱を帯びてきた。
 
「はい、2回深呼吸して。そう、それでいいわよ。次は、息を吸ったらそこで止めて。はい、いきんで。はい、力を抜いて」

 それを何回も繰り返した。
 2回の深呼吸とその後のいきみを繰り返す中で、助産師さんの激励の声に力が入ってきた。
 
「もう少しだからね。頑張ろうね。もうすぐ赤ちゃんに会えるよ」

 考子は疲労と苦痛の極致に達していたが、新の手を強く握って耐え続けた。


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