『46億年の記憶』  ~新編集版~
 ところでね、あとで知ったんだけど、わたしが子宮のゆりかごで眠っている間に大きな変化が起こっていたの。
 分裂を続けていた細胞が2つの大きな塊になって、違う役割を果たし始めたの。
 一つは母体由来の細胞と合体して胎盤になって母体からわたしへと酸素や栄養素を送り始めたし、もう一つは生命の始まりともいえる(たい)()になって1ミリほどだった大きさのわたしが毎日毎日急速な勢いで成長を始め出したの。
 すると体の中に3つのグループが現れたの。
 一つは、脳や神経、皮膚や歯などに成るために。
 もう一つは、心臓や血液、骨や筋肉に成るために。
 そしてもう一つは、消化管や呼吸器、肝臓や膀胱などに成るためによ。
 なかでも神経系統と心臓が最も早く発育を始めたんだって。
 そして、それぞれが最適な場所に収まるために体に窪みができ始めたらしいの。
 それが脊索(せきさく)というものなんだけど、将来それが背骨になって、その周りが背中になっていくらしいの。

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