『46億年の記憶』  ~新編集版~
        偵察魂 

「なんか不思議……」

 おなかの中の小さな命が写った写真を手に、考子はミステリアスな表情を浮かべていた。

「みんな同じことを言うよ」

 妊娠して初めてエコーの写真を見た女性はほぼ同じ言葉を口にすると新は言った。

「わかっていることなんだけど、研究対象とは違って自分のこととして見てみると本当に不思議よね」

 新は大きく頷いた。

「知っての通り、生命の進化を辿る旅だからね」

 それは君の専門だよね、というふうに新は微笑みを送った。

 そう、生命の進化を辿る旅は考子が専門とする分野なのだ。
 彼女は考古学者であり、進化生物学者なのだ。
 大学で生物学を学び、大学院で考古学を修めて博士号を取得した考子は、国立研究所で進化生物学を探求する道を選んでいた。

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