『46億年の記憶』  ~新編集版~
「ねえ、135億年前とか46億年前とか具体的な数字を君は言ってたけど、どうしてそんなことがわかるんだい?」

 その質問を待ってましたとばかりに考子は自慢げに説明を始めた。

「天体観測と隕石分析でわかるのよ」

「ふ~ん」

「世界中の宇宙研究者たちが世界各地の高性能な天体望遠鏡を使って宇宙最古の光を観測しているの。その研究から東京大学宇宙線研究所などのチームが年老いた銀河を発見したの」

「年老いた銀河?」

「そう。それは既に星を作らなくなった銀河のことをいうのよ。観測データを分析した結果、銀河の誕生が135億年ほど前と推測されたの。もちろん推測なので断定はできないから、彼らは更に精度の高いデータを取得しようとしているの。2021年にNASAが打ち上げる予定の次世代宇宙望遠鏡で観測して、宇宙最初期の星形成の全容を解明したいと意気込んでいるの」

「ふ~ん、凄いね。日本人研究者も頑張っているじゃないか。なんか嬉しくなってきたな」

 新は顔を綻ばせた。

「ところで隕石の分析って何を調べるの?」

「ウランよ。ウランの壊変を調べるの」

「かいへん? 何それ?」

「原子核が不安定な状態から放射線を出して別の原子核に変わったり安定な状態の原子核に変わる現象なんだけど、それによってウランの半減期がわかるの。半減期とは半数の個体が壊れることよ。で、ね、隕石の中には太陽から放出されたウランなどが含まれていて、その半減期を調べることによって太陽の誕生時期がわかるの。具体的に言うとね、ウラン238という放射性物質があって、それが安定した状態の鉛206に変わるまでには45億年かかるのがわかっていて、それを基に推測したのよ」

「ふ~ん」

 よくわからないけど、まっいいか、というような顔をした新に、「この続きはまた明日にしましょう」と考子が微笑んだ。

< 43 / 207 >

この作品をシェア

pagetop