『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
偵察魂~ママとパパ
        偵察魂 

 若い女性の体から偵察魂がふわっと浮き出て、空中に遊離した。
 それはマンションの一室の天井近くにとどまって、あらゆるものを見下ろした。
 
 突然、ぶるっと震えた。
 体内にいる卵子に報告する準備が整ったのだ。
 しかし、偵察魂は自らの言語を持っていなかった。
 だから、状況を言語にして的確に説明することはできなかった。
 そのため、捉えた映像と音声をそのまま送り届けることしかできなかった。
 ただ、それは単なる映像と音声ではなかった。
 偵察魂が見た人物の心を写し取り、心の声を読み取ることができるものだった。
 だから、映像と音声を受け取った卵子はその人の言動だけでなく、何を見て、何を思い、何を考えているのかまで把握することができた。
 更に、その背景や過去の出来事まで掴むことができた。
 あらゆる情報が送り届けられることになるのだ。
 
 偵察魂がゆっくりと降下し始め、二人の人物に近づいた。
 それは、将来のママとパパになる人物だった。
 また、ぶるっと震えた。
 その瞬間、卵子への送信が始まった。


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