『46億年の記憶』 ~命、それは奇跡の旅路~   【新編集版】
        わたし 

 聞いて、聞いて。
 あのね、今までパパから「胎芽ちゃん」って呼ばれていたんだけど、それを卒業する時が来たらしいの。
 これからは「胎児ちゃん」になるんだって。
 どんどん人間の形に近づいていくのよ。
 だからなのか、鼻の軟骨ができてきたし、網膜や水晶体、角膜もできているのよ。
 でも、まだ目は見えないんだけどね。
 それから、口の中には味蕾もできているのよ。
 まだ何も食べることができないから今は宝の持ち腐れなんだけど、生まれてからおいしいものをいっぱい食べたいから、甘味、うま味、苦味、酸味、塩味をしっかり感じるスーパー味蕾になってねってお願いしているの。
 
 あとね、肝臓もできているのよ。
 赤血球と白血球を造っているの。
 まだ脊髄がないから、この時期は肝臓で造っているのよ。
 体がどんどん大きくなるから肝臓が必死になって血液を造っているの。
 
 それからね、生まれてから順調に育って成人になったら八頭身になる予定なんだけど、今は二頭身なのよ。
 自分でも笑っちゃうんだけど、これは仕方がないことなの。
 体に比べて頭がとても大きいというのは、それだけ脳の重要性が高いということだからね。
 とにかく、わたしは頭が良くてスタイル抜群の大人になることだけは確かだから、将来を楽しみにしていてね。


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