私の笑顔はキミ限定   ~だから君の愛も私限定~
放課後、私は教室を出て寮に向かっていた。
週の初めに買い物は済ませてあるから、授業が終わり次第私は帰るようにしている。
「あ、待てよ風葵ー!」
隣の教室から葦撫がひょこっと顔をのぞかせる。
「・・・はいはい」
待っておいた方がいいだろうと私は葦撫のクラスの前で待つことにした。
「よっ」
挨拶が終わったらしい葦撫がカバンを持って教室から出てくる。
葦撫と同じクラスの紅紫もニコニコと笑いながら出てきて、3人で寮に向かって歩きだした。
「もー風葵ったら酷いなぁ」
後ろから声がして振り返る。
「・・・珊瑚」
そこに居たのは珊瑚で、今日も爽やかな笑みを浮かべて立っていた。
「・・・今日、珊瑚日直だったから。ごめん・・・?」
「~・・・っ。・・・そーゆートコだよねぇ風葵は」
首をかしげると、珊瑚の頬が赤く染まった。
「ねぇ、なに照れてんの?先輩がお前に気があるわけないじゃん」
続いて後ろから首に腕が回され、引き寄せられる。
「・・・綺翠、危ないよ」
「あーごめーん」
謝る気なしの綺翠に呆れ、私はその腕を外してもう一度歩きだした。
「綺翠さ、年上に対する態度気を付けなよ?」
「敬える人になってよお前はー」
珊瑚の注意に綺翠はニコニコと笑い返す。
「はぁ・・・」
もうなにを言っても無駄だと思ったのか、珊瑚は無言で綺翠の横を通り過ぎた。
「あっなぁ!」
ずっと黙っていた葦撫が思い出したように声を上げる。
「葦撫、声でかいよ」
紅紫に注意されながら葦撫は私を見た。
「風葵、今日の晩飯なんか作ってくんね?!」
「・・・え?いいけど・・・」
突然のお願いにあいまいに頷く。
「ちょっと葦撫、俺の風葵を困らせないで」
「彼氏面すんじゃねーよ珊瑚!あとさらっと俺のとか付けんな!」
珊瑚の言葉に葦撫がすぐ反応し、廊下を歩く生徒からは何事だと言わんばかりの視線が向けられた。
「あっクラティアン!」
「そろってるぞ、運がいい・・・!」
「幸運のクラティアンだ!」
幸運のクラティアンって・・・。
「うるさ・・・早く行こ、先輩」
綺翠は鬱陶しそうに私の手を引き、エレベーターに乗り込んだ。
「・・・」
エレベーターの中に無言が続く。
「・・・ご飯、お任せでいい?」
「おっいいぜ!ありがとな!じゃあ風葵の部屋で食うか!」
「・・・ん、つくれたら連絡する」
ちょうど最上階に着き、私は外に出た。
「・・・じゃ」
なんて言っていいのかわからず、私はそう呟いて部屋に入る。
さて・・・なにをつくろう。
みんな食べに来るっぽいし、全員分必要だよね・・・。
とりあえずお米を炊く。
葦撫は特にたくさん食べるし、余ったら冷凍ご飯にすればいいだけ。
多く炊いてももったいなく捨てるコトはない。
綺翠はバターライスのオムライスが好きだったはず。
紅紫は肉じゃがとだし巻き卵。
珊瑚は天ぷらと油淋鶏(ユーリンチー)
葦撫はハンバーグとポテトサラダだ。
1人一品とかはちょっと嫌だから、大きめのお皿に乗せてバイキング形式にしようか。
私の部屋の冷蔵庫や野菜室には、みんなの好きなご飯の材料がいつも入っている。
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