星の数ほどいる中で【完】
「信じられない……?」
海さんが、心細げな顔で問うてくる。
「信じられないって言うか……私が、夢見すぎた展開みたいで……」
私がいつも思い描いていた、私の未来の幸せ。
思わず両頬を自分でつねった。痛かった。その様子を見て、海さんは苦笑した。
「……本当だよ。俺、天ちゃんに惚れてんの。だから、天ちゃんの一番になりたい。天ちゃんには、……そうだな、俺の一番を、受け取ってほしい」
頬を染めた海さんが、迷いながらも言葉をくれる。
お父さんとお母さんの、お姫様と王子様の物語みたいな運命に憧れていた私の、描いた未来。それは、今……
そっと手を伸ばすと、海さんは手を重ねて、受け取ってくれた。
「私、海さんを幸せにできますか……?」
「うん、天ちゃんが一緒にいてくれたら俺は幸せです。だから、一緒に幸せになろうよ」
「……っ、はい……っ、わたしも……海さんの一番になりたい、海さんが、すきです……」
この人を独りにしたくない。最初にそう思ったのは、出逢ってすぐのとき。
だからあのとき私は、診察室までついていってしまったんだ。
――一目惚れされることに憧れていた。でも、海さんに一目惚れしていたのは、私だったみたいだ。
目元をもう片手でぬぐう。
「泣かせちゃってごめんね」
「……本当です、なんなんですかこの怒鳴り合いの告白。一世一代の告白なのに」
「俺もまさかこんな展開になるとは考えてなくて……ごめん、全くカッコ決まらず……」
海さんが悔しそうな顔で言うから、
「いいじゃないですか、カッコつかなくても」
私はほほ笑みながらそう言った。
「どの海さんも、好きですから」