星の数ほどいる中で【完】
何でもない日
「終わったー! ねえ、どっか寄ってかない?」
「ごめん、あたし今日彼氏と約束あるんだ」
「わたしも彼氏と帰る約束してるから……」
「そっかー。じゃあまたね」
「ばいばーい」
「またねー」
高校二年生。
そろそろ受験も気になってきた頃の私は、高校で出会った二人の友達と一緒にいることが多い。
大人っぽい系と可愛い系の二人は、それぞれ大学生と同い年の彼氏さんがいる。
運命の初恋に期待しすぎていたわたしは、ぼっちだ。
「さみしくなんかない。さみしくなんかない……」
うん、余計にさみしい。
一人の帰り道。
私は石ころを蹴りながら歩いていた。
寄り道をしたかったら、一人で行けばいい。
いまどき、カフェもファミレスも一人で入れる。
でも、友達が一緒じゃないとなんとなく足は向かなかった。
下ばかり見ているのも飽きたので、顔をあげてみた。
ちょうど、病院の庭園に面している場所まで来ていた。
ここは地元で一番大きな病院で、一階と屋上に庭園がある。
車椅子の方や杖をついている方も使いやすいように舗装されていて、四阿やベンチも点在している。
ふと、歩道を歩く私に背を向けるような恰好で車椅子に座る方が目に入った。
男性かな、と思った。
その程度で通り過ぎるはずだったのに、男性は車椅子の手置きを掴んで立ち上がり――前方によろけた。
「!」
病院の敷地を囲むフェンスは私の身長くらいで、運動が好きな私には軽々飛び越えられた。
そのとき、膝と手を地面についた男性と、目が合った。
「大丈夫ですか!?」
駆け寄って、傍らに膝をつく。
ええと、こういうときどうすればいいんだっけ――
「痛いとこないですかっ? あっ! 看護師さん、今看護師さん呼んできますね!」
怪我なんてしていたら、私が処置するよりもプロに任せた方がいいだろう。
ここは病院の敷地内だから、少し探せば見つかるはずだ。
「だ、大丈夫、ぶつけてないし、怪我もしてないから――」
「それでも診てもらった方がいいです! あ、すみません! 看護師さん、こちらに来てもらっていいですかっ」