星の数ほどいる中で【完】

通りかかった看護師さんを見つけて、声をあげた。

すぐに駆け寄ってきてくれて、男性を車椅子に座りなおさせ、院内に連れていった。

そして私も、流れでついてきてしまった。

医師が一般外来の方にいるらしく、男性はそこへ連れていかれて、診察室へ入った。

別にこのまま帰ってもよかったんだけど、心配だったので待合室で待っていた。

もう午後なので、待合室は混んではいない。

程なくして、看護師さんに車椅子を押された男性が出てきた。

そして私を見るなり、顔を明るくさせる。

自分で車輪を動かして、私の方までくる。

そういうつもりだ、とわかったので、私も椅子を立って男性の方へ歩み寄った。

「大丈夫でしたか?」

「はい。ご心配をかけてしまいすみませんでした。問題はないと言われました」

「そうですか……よかったです。では、私はこれで」

「今まで待っていてくださって、本当にありがとうございました」

――そして、私は病院を出た。

さっきまで淋しかったけど、心配が勝ちすぎていつの間にかそんな気持ち、なくなっていた。

「これがショック療法ってやつか……」

人助け――になったかわかんないけど――、してみるもんだな。

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