星の数ほどいる中で【完】
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「こんにちは」
ん?
翌日の帰宅中、聞き覚えのある声がして辺りを見回すと、昨日と同じ場所に車椅子の男性がいた。
私の方を見て手を振っている。
「こんにちは。出歩いて大丈夫なんですか?」
私もフェンスに駆け寄り、男性に言葉を返す。
「はい。昨日はちょっと気が焦り過ぎていて……」
「何かあったんですか?」
「リハビリをしてるんですけど、やっぱり思うように足を動かせないことにイラついてしまって……」
「それで一人で立とうとしちゃったんですか。危ないですよ」
「うん、反省してます。通りすがってくれたあなたにも迷惑かけちゃったし……」
「あ、私のことは気にしないでください。その辺の石ころとでも思っててください」
「石ころっ? え、学校で何かあったんですか? いじめ、とか……?」
「別にないですよ?」
「そ、そうですか……」
「あの、そちらに行ってお話してもいいですか?」
「来てくれるんですか? 時間とかは……」
「これから帰るだけなんで。正面玄関から回るんで、ちょっと待っててください」
いつまでもフェンス越しに話していたらヘンに思われるかな? と思って、私から提案した。