Midnight Summer Memory
皆がつまらなそうに帰っていく。
こうなることは予想していなかったので、帰ってもいい。
そうは言っても、この人混みの中を動くのは危険だ。

花火のフィナーレでプロポーズ、と思ったのに、何だか計画が台無しになってしまった。

またタイミング、考えないと……

それにしても、雨の中帰るのは身体に良くない。

それは分かっている。

ただ、この場にずっといるわけにもいかない。

どうしようと思案していると、深月がどこかに電話を始めた。

「ん?深明がね、麗菜(れいな)ちゃんを見かけた、って言ってて。

あの子がいるなら、両親も、麗菜ちゃんの執事さんもいるはずよ。

この混乱の中帰るより、少しやり過ごして、それから帰ったほうがいいわ。

無用なトラブルは避けたほうが身のためよ。

雨に打たれたままじゃ風邪引くし、お風呂くらいは貸してくれるだろうから」


そういえば、椎菜のところの子、麗菜ちゃんと深明ちゃんは同級生になるのか。

産まれたのが数週間、ずれただけなのだという。

なるほど、深月の聡さは学生時代と変わっていないようだ。

その聡さに何度助けられたことか。

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