After school At home
焼肉を終えて、帰宅する。
「つばさ、はーちゃんに家の中案内してあげて」
「え? 男同士の方が良くない? お兄ちゃんは?」
「酔い潰れて寝てるわよ」
「もー!」
お兄ちゃんに代わって竹内くんに家のことを教える。
「ここがトイレで、あ、2階にもあるよ。で、こっちがお風呂。バスタオルはここにあるから。お兄ちゃんはどうせ寝てるから、今日はきにせず竹内くんの好きな時間に入って」
「うん」
「日曜に来れば良かったのに。そうすればもっとちゃんと家の中案内できたよね」
「学校で会って驚かせたかったから」
彼はニヤリと笑う。
「えーひどいなあ」
階段を上ると、そこはわたしとお兄ちゃんの部屋。それから、空いていた一部屋が今日から竹内くんの部屋。
「ここがはーちゃ……じゃなかった、竹内くんの部屋。家具はもともとあるから大丈夫だと思うけど、荷物は自分で開けたいと思って段ボールそのままにしてるよ」
「うん」
「あ、でも今日これから荷物開けて必要な物を探すって大変そうだね。わたしも手伝おうか?」
わたしの言葉に、竹内くんは少し考えるように黙ってから口を開いた。
「うん。お願い」
ニッコリ笑ってお願いされて、わたしは彼の部屋に入った。
その瞬間「ガチャリ」と、カギの閉まる音がする。
「え? なんでカギ——」
「ひどいよなぁ、つーちゃん」
ドアの前に立つ竹内くんがこちらを見る。表情が、さきほどまでの柔和な雰囲気と違って、なんとなく怖い気がする。
「俺がつーちゃんのために〝いい子〟になろうって努力してきたのに」
「え? 竹内くん? どうしたの?」
背の高い彼が、じりじりとこちらににじり寄ってくる。
「まさかその間にチャラくて悪い男とつき合ってるだなんて」
「え、ちょっ——」
ヒザの後ろがベッドに当たって、ストンと落ちるように座り込む。
その途端、竹内くんがわたしに覆いかぶさってきて……押し倒されてしまった。
「約束したのに」
彼にみつめられて、心臓がバクバク鳴ってる。
「や、約束?」
「〝いい子になったら、はーちゃんのお嫁さんになってあげる〟って」

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