君とリスタート 剣士様は抱き枕を所望する
朝の一方的な戯れも終了し、宿で出発の支度をしているライとシオン。
「お、そうだシオン」
ライは懐から出した物をシオンへと見せる。
薄い紅色の小さな石が付いた、細い銀鎖の首飾り。
「桃色金剛って石、幸運を呼んでくれる石なんだと。昨日助けた娘さんが好きな装飾品くれるって言うから、それ貰って来た」
「可愛い。くれるの?」
「俺は装飾品とか付けないし、石言葉も余り信じてないからな」
首飾りを見つめ、シオンは嬉しそうに瞳を輝かせている。
ライはシオンの背後に回り、銀鎖を首に巻く。
シオンの鎖骨の間で、謙虚に主張する桃色の石。
「ありがと、ライ。嬉しい」
「気に入ってくれたなら何より」
突然、シオンはライの真正面に立つ。
そのシオンの瞳には、揺るがない力強い決意が見て取れる。
「ライ」
「ん?」
「私、決めました」
「何を?」
「貴方には、私を好きになって貰うって」
「は?」
「とある方に教えて貰ったんです。男の人って好きな人のお願いには弱いと」
「まぁ、うん、全員に当て嵌まるかは不明だけど、一定数は居るね」
「作戦を考えたんです。力での足止めは絶対に敵わない。なら、私を好きになって貰い、ライに『サクラコを諦めて』ってお願いするしかないんじゃないかと」
何とも単純で可愛い決意表明だ。
ライは楽しそうに笑いだす。
「はははっ、そっかそっか、うん、頑張れ、可愛いなシオンは」
「笑う事ないでしょ!こっちは真剣なのに」
「ごめん。で、何か俺を惚れさす秘策でもあるの?言っとくけど、告白とか涙とか、色仕掛けとかは慣れてるから通用しないよ」
「どこに行ってもモテモテな剣士様ですからね、女の武器が通用しないのは百も承知ですとも。だから、同行しながら作ろうと思って」
「何を?」
「強力な惚れ薬を。今、レモンに頼んで惚れ薬に関する資料を集めて貰ってる所」
「・・・それは、狡くないか?」
「卑怯と言われようと、作戦成功の為なら構わない。魔王城に着くまでには、絶対に完成させてみせる。あ、ライ、ちょっと待ってて貰っていい?助言くれたお姉さんにお礼してくる」
言うだけ言って、シオンは部屋から飛び出して行ってしまう。
「・・・忙しない奴だな。惚れ薬って、突拍子のない事を言い出すとこまで似んのかよ」