君とリスタート 剣士様は抱き枕を所望する
シオンは、占い師の淑女と昨日、遭遇した場所に付く。
でも、そう簡単には見当たらない。
お礼を言いたかったな、と思うが、ライを何時迄も待たせて置く訳にもいかない。
諦めて引き返そうとした、その矢先。
「私をお探し?」
シオンの前に、空からふんわりと降ってくる、探し人。
この淑女は人間だ、きっと何らかの魔術石の力なのだろう。
「昨日は助言、ありがとうございました。これ、助言のお代です」
「お役に立てたなら嬉しいわ。お代は遠慮なく頂くわね。それと、よく似合ってるわ、胸の石」
「あ、ありがとうございます。まだ、付け慣れなくて、何か褒められると照れ臭いですね」
「桃色金剛ね、とても希少な石よ。今じゃ殆ど取引すらされていないわ。贈り主は相当な資産家さんみたいね」
「えっと、人助けの礼として貰ったけど、自分は要らないからくれる、と言っていましたが」
「まさか、有り得ないわ。どんな理由があろうとも、無償で桃色金剛を譲る奇人なんて居るとは思えない」
「でも、現に」
「お嬢さんに、気を使わせたくなくて、そう言ったのでしょうね。桃色金剛は、相手の幸せを願い、贈られる石。愛されてるわね」
「はぁ」
「あら、信じてない反応ね。それじゃ、また縁があれば何処かでね」
淑女は現れた同様に、空へと舞い登って行った。
シオンも宿に駆け足で戻る。
ライは、宿の外で立ち尽くしていた。
「ライ、御免なさい」
「いいよ、用事は済んだ?」
「えぇ。ねぇ、ライ、この石なんだけど」
「ん?」
「えっと、あ、やっぱり何でもない」
「そ、じゃあ、行こうか」
ライに、淑女の話の真意を確かめようとしたが、寸前でシオンは止めた。
ーーーー私にはどうでもいい事か。石の真意なんて、旅の目的には何の関係もない。
おそらく昨日助けた娘さんが、ただ単に石の価値を知らずにライに譲ってしまっただけなのだ。と、シオンは適当に結論付けた。
第三話「真面目魔族は隠し事が出来ない」終