君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する
シオンは足を止めると、あからさまに不機嫌顔をしてライを睨む。

「サイッテー。想い合う二人を強引に引き離そうと、魔王城を目指してたんだ。ライは遊び人だけど、心根はいい奴だと思ってたのに、むぐっ」

シオンの口元に、食べ掛けの団子が押し付けられる。
ライは受け取れとばかりに、シオンの手を掬い持ち上げ、団子の串を持つ様に促す。
仕方なしに、シオンは団子を受け取り、小口で団子を食べ始める。

「手紙が届いて、そう書いてあったとしても、それが真実かどうか定かではないだろ?もしかして、魔王に脅されて無理矢理そう書かされたとも限らない」
「魔王様はそんな事しません!とてもお優しい方です!」
「可能性の話だよ。国王も、頭ごなしに手紙を否定している訳じゃない。魔王一派が平和主義者と言う事も理解してるさ。でも、父親なんだよ、娘が心配で仕方ないんだ。姫を連れ帰り、姫の口から直接真実を告げれば、国王も安心するだろ。王も優しい人だ、姫の意思を邪険にする事はないさ」
「なら、私がサクラコにその旨を説明し、一度ラビア城に戻って頂けないかと頼んでみる。なので、後は私を信頼して任せて欲しい。だからライは、此処で引き返して」
「それとこれとは話が別」
「何で?」
「姫と一緒に、ラビア城に戻るって事に意味があるの。じゃないと褒美が貰えないからな?」
「・・・守銭奴。まだライが女性だったら、魔王城に客として招く事も可能な範囲内だったんだけどな」
「どういう事?」
「魔王様ね、サクラコに男性が近づくと心配の余り、身が入らず上の空状態になって、業務に支障をきたす程、可哀想な事になるの」
「可愛い魔王だな」
「えぇ、とても可愛らしいわ、捨てられる事に不安がる子猫の様。でも、サクラコが関わらなければ、とっても素敵で格好いい方よ、魔王様は」
「・・・へぇ、そう」

要らぬ不安を与え、魔王の心を乱して欲しくないシオンは、やっぱりライにはサクラコの事を諦めて貰うしかないなと、改めて思うのだった。
シオンの惚れ薬作戦はまだまだ継続されそうだ。

「シオン、俺の前で魔王を褒めるな」
「どうして?魔王様は素敵な方だし、ライにも魔王様の魅力を感じて欲しいんだけど」

ライは、焼き団子を口に含み、モクモク食しているシオンの唇に強引に口付ける。
驚ろくシオンをお構いなしに、舌を捩じ込ませ、団子を一緒に味わい出す。

「魔王自慢する度に、口付け一回な」

唇が離れたと思うと、憎たらしい顔付きでライがそう告げる。

「わ、私、初めてだったのに・・・」
「シオンの初めては、既に出会い頭のあの森で奪っているから、そう気にするな」
「狼でももう少し自重するわよ、この阿保、助平!!」


第四話「雑談は団子を食べたながら」終

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