君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する

第六話「剣士様は面倒見がいい」

橙色の空色は、もう時期、暗闇へと変わる。
夕刻の時間帯に、たまたま村や町に訪れる事が出来ればそれに越した事はないのだが、そう上手い具合に事が運ぶ事は珍しい。
故に、野宿せざるおえない時もある。
シオンは心底、野宿を免れた事に、喜びの笑顔を浮かべている。
今、ライとシオンが居る場所は、色んなお酒が楽しめる事で有名な、そこそこ大きな町だ。

「シオンは酒、呑めるのか?」
「余り好まない。美味しいと感じないもの。ライは?」
「普通には嗜むよ。ツマミを食いながら、朝までゆっくり呑み続けるってのがまた、至高なんだよな」
「ざるって事ね。お酒を美味しく呑める人ってちょっと羨しい。楽しそうだもの」
「ここには柑橘系の甘い酒もあるだろうから、挑戦して少しずつ慣れて行くって言うのも有りかもな。でも、無理して酒に馴染む必要はないと思うよ、酒で失敗する輩も多い訳だしさ。でも、シオンがどんな酔い方するのか少し見てみたいってのはあるな、俺的には理性壊れて素直な可愛い甘え上戸な女の子になってくれる事を期待かな」
「理性なんて、そう簡単に壊れるものじゃないでしょ」
「壊れる奴は、呆気なく壊れんだよ。特に、シオンみたいに酒慣れしてない奴は」
「理性を手放すなんて真似、私に限って有り得ない。警備隊で、それなりに精神訓練だって受けてるんだから」
「余り、酒の威力を見くびらない方がいいよお嬢さん。後で後悔しても知らないよ」

ライとシオンが、軽い雑談をしながら町歩きをしていると、そこにーーー。

「らぁぁぁぁい!!」

突然現れた男が、振り上げていた刀をライへと振り下ろしてきた。
けれど、ライは素早く腰にある鞘から刀を取り出し、簡単にそれを受け止める。
ガキーン!と刀同士がぶつかって鈍い音が鳴る。

「まだ、んな鈍刀を持ち歩いてんのかよ」

ライが取り出した刀は、刃毀れが激しく錆も見受けられる。
それは、剣士としては致命的な、明らか“何も切れない刀“だ。
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