君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する
「久しぶりだなライ。まさか、こんな所で出会うなんて思ってなかったよ」
「えっと、誰だっけ?」
「ケンゴだ!!わざとなのか!?何度か剣客試合で対峙したり、盗賊討伐なんかで一緒に行動しただろうが!!?」
「あ~ケンゴね、そういや居たな」
「俺なんて眼中にないってか?相変わらず腹の立つ奴だな」

ケンゴの両手で振り下ろされている刀を、ライは片手で錆刀を振り、簡単にケンゴを後ずさりさせた。
悔しげに顔を一瞬曇らすケンゴだが、すぐに活気のいい元気な笑みを浮かべ、刀を鞘に戻していた。
ライも、錆刀を鞘にしまう。

「容易く払われちまったか、やっぱ強いなライは。なぁライもまた剣客試合出ろよ!もう一度、お前と真剣勝負がしたい。いい武器屋も紹介するからさ、そろそろ新しい刀に取り換えたらどうだ?俺は、お前の手加減なしの真の怖さと戦ってみたいんだ」
「勝負する気も、刀を換えるつもりも俺にはないよ。そもそも試合も、頼まれ事として参加しただけだったしな」
「俺がもっと実力付けて、そんな余裕な戯言、ほざけなくさせてやるよ」

不意に、ケンゴの視線がライの隣に居るシオンに移る。

「でもまさかだったな、あの氷の剣士様が女と一緒に居るなんて思わなかったよ。それともあれか?今夜限りの女を見繕ったってとこか?いいね、引くて数多な色男さんは」
「野暮な事を聞くね、ま、ご想像のままにどうぞ。行こうか、シオン」

ライはシオンの手を引き、ケンゴを残し、その場を後にする。


*****


陽が完全に落ち、ライとシオンは、歴史が有りそうな立派な旅館に、今夜はお世話になる事にした。
また例の如く、旅館の中居に「布団は一組で」と軽率な発言をしようとするライの口を、シオンは慌てて両の手で抑える。
急接近してきたシオンを、ライは躊躇う事なく、ぎゅっと抱きしめ、掌を舐める。
シオンは、反射的に手を引く。

「あらあら戯れあっちゃって、仲の良い若夫婦ね、羨ましいわ」
「警戒心が強い妻でしてね、でもそこがまたコイツのいじらしくて、可愛い所ではあるんですけど」

中居の賛辞に、ライは飄々と何食わぬ顔で嘘を付く。

「勘違いしないで下さい、妻じゃ有りません!!」
「秒読み段階です」
「ライ!離して」
「恥ずかしがる事ないだろ?夜はもっと濃厚な時間を過ごしてると言うのに」
「ライッ」
「あらあら」
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