君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する

シオンは旅館の温泉で疲れを癒し、部屋へと戻る。
すでに、湯上がり状態のライがそこに。

「なぁシオン、中居さんが教えてくれたんだけどさ、この旅館、西側にお客さん限定の酒盛り場があるんだと、一緒に行かね?」
「・・・」
「変な意味はない。純粋な誘いだ」
「なら、付き合う。警備隊として今後、お酒に携わる責務が任されないとも限らないから、少しでも修練して慣れておかないと」
「真面目だね。もし、お酒に呑まれ落ちたとしても、俺が手厚く介抱して寝床まで運んであげるよ」
「そんな、不甲斐ない事態になる訳ないでしょ」


*****


落ち着いた雰囲気のある、薄暗くこじんまりとした店内。
店主と客の間に、飲食用の仕切り台があり、椅子も一人一人ではなく、仕切り台と同じ長さの椅子が用意されているだけの、単調した作りの酒場。

酒場の店主は、客の要望も聞き、それに合わせた独自のお酒を提供してくれる、とても気さくで明るい年配の男性だ。
酒に余り舌慣れしてないシオンには、度数低めの初心者用の甘い蜜柑酒を(こさ)えてくれた。
最初は「甘くて美味しいです」と店長に賛辞の言葉を送っていたシオンだったのだが、一杯目を呑み終わる前にはもう・・・。

「りゃい~」
「ん、何ですか?」
「りゃいが、のんでゆのも、ちょーだい」
「駄目、これは甘くないお酒なので、シオンさんのお口には合わないの」
「ひとくちも、だめ?」
「そうだな、口移しでならあげてもいいかな」
「いいよ~」

警備隊の精神訓練も、お酒の威力には敵わなかった様だ。
花咲く綻ぶ笑顔を浮かべ、ライに身を寄せだすシオン。
口が触れ合った所で限界が訪れたのか、そのままシオンはライの肩に倒れ込む。

「たく、可愛い酔っ払いめ」

で、眠ってしまったものは仕方なく、シオンを自分の膝を枕に寝かせ、ライは一人で頼んだ豆をつまみながら酒を嗜む事にした。

「店主、ここの蜜柑酒って、度数強いの?」
「いんや、むしろ嬢ちゃんが酒初心者って話てたから、弱めに調合したつもりだったんだけどね」
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