君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する
「ごほ、ごほっ」
「良かった、息を吹き返してくれて。大丈夫ですか?」
「はぁ、はぁ、っごほ・・・・はい、助けて下さり、ありがとう、ございます」
「ご無事で何よりです」

シオンは、熊親子の時と同様、透き通る布を出現させると、その男性にふわりと掛ける。
濡れていた服が、すぐさま張りを取り戻し乾く。
そして、もう一枚布を出すと、シオンは自らを布で覆い、服を乾かしていた。

「便利だな、その業」
「疲れるから、余り使いたくはないんだけどね」
「その業があるなら、人工呼吸する必要あったのか?最初から、その布を使って回復すればよかっただろ?」
「病気とか呼吸困難には使えないの。見てくれを回復させる業だからね」
「ふ〜ん。所で、湖の中で何をしてたわけ?」
「手と足の生えたでっかい魚が、この男性を掴んで、湖の底へと引きずり込もうとして居たから、取り敢えず目眩しさせて、その隙に脱出したってとこかな」
「湖の主的な存在か?」
「おそらくね。悪いのは、釣り禁止の看板があるのに、それを破ったこの男性っぽいし。穏便な方法で解決しようと思ったら、あの閃光しか思い浮かばなかったの。攻撃業で主様を傷つける訳にはいかないし」
「・・・お優しいね」

横になって居た男性が起き上がる。

「申し訳ありませんでした。禁止な事は承知して居たのですが、此処で取れる魚は薬にも毒にもなる希少種が多く、病弱な両親の為に、どうしても入手したかったのです」
「どんな事情があろうと、人間や魔族が、神秘に易々と踏み込むものじゃないわ。今回、貴方が助かったのは、本当に運が良かっただけなんだから」
「はい。本当に、有難うございました。あの、良かったらお礼をさせて頂けませんか?見た所、旅の方々の様にお見受け致します。今晩の宿がまだお決まりでないのなら是非、我が家をお使い下さい」

もうすぐ陽が暮れる。
今から街を探して、宿を取るのは難しい。

「・・・俺は別に野宿でも構わないんだけど」
「私は嫌。お言葉に甘えさせて貰ってもいい?」
「勿論です。あ、名乗るの遅れて申し訳ありません、僕はリュウと言います」
「私はシオン。こっちはライ」
「シオンさんですか、可愛らしいお名前ですね。では、我が家までご案内します、すぐ近くですので」

シオンは野宿が間逃れ軽い足取りで、リュウに着いて行く。
ただ、ライはその場から動こうとしない。
まさか、只で泊まれるのに本当に野宿するつもりなのか?と、シオンはライに向き直る。

「ライが嫌なら無理強いはしないけど、一緒にお邪魔させて貰おう?」
「・・・俺が嫌だと言ったら」
「その時は、私も野宿する。ライに逃げられちゃ困るしね」
「ったく、分かったよ」

怠そうに、ライはシオンの横に並ぶ。
渋々ではあるが、リュウの提案を受け入れる事にした様だ。
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