君とリスタート 剣士様は抱き枕を所望する
リュウの民家で夕食と風呂を頂き、後は部屋で休むだけとなった頃。
「シオンさん、俺と結婚して頂けませんか?全身全霊を掛けて幸せにします」
「・・・えっと、ごめんなさい。私には、慕っている男性(魔王)も居ますので」
「ライ、ですか?」
「違います。ライは、訳あって一緒に行動しているだけの仲です」
「あの一晩、一晩だけ僕との将来を考えてみては頂けませんか?一応、領主の息子なので、お金の面に関しては苦労させない自信があります。今日、シオンさんに出会い、助けて頂いたのは何かの縁だと思うんです」
真っ直ぐなリュウの熱意に押され、答えは決まっているのにも関わらず「分かった」とシオンは頷いてしまう。
ーーーー考えた事にして、明日の朝、正式にお断りを入れれば、彼も納得して諦めざるおえないでしょ。
「ありがとうございます、シオンさん。いいお返事を期待していますね」
「もう、お部屋で休ませて貰ってもいいかな?少し疲れてて」
「是非、ゆっくり休まれて下さい。今日受けた御恩は一生忘れません。では、お休みなさい、また明日」
「あ、はい、おやすみなさい」
ご機嫌なリュウに、シオンは愛想笑いで応え、用意して貰った部屋へと向かう。
シオンと入れ違いで、風呂上がりのライが髪を濡らしたまま、リュウの側へと寄る。
「無駄な努力、だとわかんねぇの?」
突然の上から目線の物言いに、リュウはライを睨む。
「挑戦してみなきゃ、無駄かどうかなんて分からないものでは!?万が一だって事が起こるかもしれないじゃないですか。ライも結局の所、シオンさんが好きなのですか?」
果敢に言い返すリュウに、ライは不敵な笑みを浮かべる。
「・・・まさか、アレは俺の艶事を紛らわす玩具だよ」
好意のある女性を「アレ」呼ばわりされ、尚且つ、酷い処遇の言い様に、リュウは頭に血が登る。
けれど、ライが自分に向ける、殺意に満ちた目線に囚われ、熱気たった身体は一気に涼む。
下手に反応すれば、殺される。
リュウは本能で、そう悟る。
「・・・風呂、ありがと。おやすみ」
そう言い残しライは、リュウが提供してくれた部屋ではなく、シオンの部屋へと入る。
リュウの視線を背後に感じながら。