君とリスタート 剣士様は抱き枕を所望する
朝、支度を済ませ、台所へと向かうライとシオン。
机には既に果物やパン、スープが並んでいた。
「おはようございます、シオンさん、ライ。よく眠れましたか?」
「おはよ、これ、リュウが用意してくれたの?」
「はい、召し上がって下さい。俺に出来るお礼と言ったら、これくらいなので」
「美味しそう、それじゃぁ、遠慮なく頂きます。あ、でもその前に。ねぇリュウ、昨日の返事だけど、私、やっぱり」
「大丈夫、分かってます。俺の方こそ、昨日はシオンさんを困らせてしまい、申し訳有りませんでした、どうかお忘れ下さい」
昨日の熱烈具合とは異なり、随分と落ち着いている。
一晩経って、リュウも冷静に判断出来る様になったのだろうと、シオンは思う。
危険な所を助けられ、感謝をしていたとはいえ、会って間もない、よく知りもしない人間に結婚の申し出なんて、冒険が過ぎる行為だ。
シオンは、とりあえず気の重い件が解決した事に、安堵の息を吐く。
「スープ、温かいうち呑んじゃって下さいね」
「ありがと、頂きます」
*****
シオンが朝食の礼にと、後片付けに徹底すれば、男二人だけのつまらない時間が流れる。
リュウは、昨夜からどうも納得しきれていない疑問を、何気なしにライへと問う。
「君にとって、本当にシオンさんは単なる玩具なんですか?昨夜、僕を殺さんばかりに威圧して来た瞳は、愛憎と嫉妬に狂ってた様でしたが?」
それは、ライにとって曖昧にすべき感情で、答えを思案してはならない事柄。
けれど何時迄も、ぬるま湯に浸かっている訳にも行かない事も、ライ自身が一番、分かっている。
こんな、虚しいだけの茶番劇、そろそろ終わらせるべきなのだとーーーー茶番劇が、茶番であるうちに。
「・・・リュウ、君の真っ直ぐさは、どこまでも俺を不愉快にさせてくれるよね」
第七話「魔族娘の天然華」