君とリスタート 剣士様は抱き枕を所望する
第八話「剣士様と魔族娘の仲違い」
可愛い、触れたい、抱きしめたい、独り占めしていたい。
自然と湧いてくる、優しくて切なくて温かくて、こそばゆい気持ち。
ーーーー俺が、ユキトにだけ芽生える感情。
俺が愛でると決めた唯一の女は、ユキト、たった一人だ。
同じ村で生まれ、育った俺達。
互いの恋心を抑える事が出来なかった俺達は、14の時、大人達に内緒で、永遠の愛を誓う儀式を行い、本能と愛着のままに求め合い、初夜を過ごした。
そして、成人を迎える間際に、ユキトは痛みと恐怖と絶望の中で死んでいった。
諦めの悪い女だから、絶対に助けが来る事を信じて待っていた筈なんだ・・・なのに俺は。
*****
「お前、鬱陶しくて目障りなんだよ。ユキトの身代わりとして、ごっこ遊びを楽しませて貰ってたけど、もう飽きたからいいや、さっさと消えてくれない。魔王城に向かうのもちょうど怠くなって来た所だったし、姫の件はお前に任せるわ。良かったな望みが叶って、これでお前が俺と一緒に居る理由、無くなったな」
夕闇の中、そう言い放ったライの視線も声も、冷たく氷の様だった。
一歩も動けずに居るシオンを残し、ライは道沿いに歩いて行く。
いつもは隠している角も、今は菫色の髪の隙間から飛び出している。
どのくらい、シオンはその場にいたのだろうか。
通り掛かった泥酔気味の男数人が、シオンに声を掛ける。
「お姉ちゃんさ、こんな所で何してるの?気分でも悪いのかな?」
「・・・」
「お、可愛い顔してるじゃん。俺、一度でいいから魔族の子に夜のお世話して貰いたいって思ってたんだよね。どう俺達の相手してみない?勿論、駄賃は弾むからさ」
「・・・」
「取り敢えず、宿屋探そっか」
男の一人の腕が、シオンの肩に回される。
その瞬間、男は吹っ飛んだ。
「・・・コイツに触んな」
突如現れた狂気的な目に睨まれ、男達は吹っ飛んで気絶している男を残し、駆け足で退散して行く。
「・・・」
「・・・」
「何やってんだよ、あんな男共、簡単に蹴散らせるだろ」
「・・・優しいね、ライは」
シオンは、ライから貰った桃色金剛の銀鎖を首から外すと、ライに差し出す。
「返すね」
「それは、お前にやったものだ。返す必要はない。俺には不要な代物だ」
「・・・名前、呼んでくれないね」
シオンの瞳から流れ出す雫。
そして、銀鎖もシオンの掌から溢れ落ちる。
すかさず、ライが銀鎖を捕まえ、握り込む。
「ほらね。大事なものなのでしょ?」
シオンが指笛を鳴らす。
飛んで来たレモンが、いつも通りシオンの肩に止まる。
少し困った素振りを見せたレモンは、慎重にシオンの背に回り、翼を広げ、シオンと一緒に夜空へと舞い飛んで行った。
自然と湧いてくる、優しくて切なくて温かくて、こそばゆい気持ち。
ーーーー俺が、ユキトにだけ芽生える感情。
俺が愛でると決めた唯一の女は、ユキト、たった一人だ。
同じ村で生まれ、育った俺達。
互いの恋心を抑える事が出来なかった俺達は、14の時、大人達に内緒で、永遠の愛を誓う儀式を行い、本能と愛着のままに求め合い、初夜を過ごした。
そして、成人を迎える間際に、ユキトは痛みと恐怖と絶望の中で死んでいった。
諦めの悪い女だから、絶対に助けが来る事を信じて待っていた筈なんだ・・・なのに俺は。
*****
「お前、鬱陶しくて目障りなんだよ。ユキトの身代わりとして、ごっこ遊びを楽しませて貰ってたけど、もう飽きたからいいや、さっさと消えてくれない。魔王城に向かうのもちょうど怠くなって来た所だったし、姫の件はお前に任せるわ。良かったな望みが叶って、これでお前が俺と一緒に居る理由、無くなったな」
夕闇の中、そう言い放ったライの視線も声も、冷たく氷の様だった。
一歩も動けずに居るシオンを残し、ライは道沿いに歩いて行く。
いつもは隠している角も、今は菫色の髪の隙間から飛び出している。
どのくらい、シオンはその場にいたのだろうか。
通り掛かった泥酔気味の男数人が、シオンに声を掛ける。
「お姉ちゃんさ、こんな所で何してるの?気分でも悪いのかな?」
「・・・」
「お、可愛い顔してるじゃん。俺、一度でいいから魔族の子に夜のお世話して貰いたいって思ってたんだよね。どう俺達の相手してみない?勿論、駄賃は弾むからさ」
「・・・」
「取り敢えず、宿屋探そっか」
男の一人の腕が、シオンの肩に回される。
その瞬間、男は吹っ飛んだ。
「・・・コイツに触んな」
突如現れた狂気的な目に睨まれ、男達は吹っ飛んで気絶している男を残し、駆け足で退散して行く。
「・・・」
「・・・」
「何やってんだよ、あんな男共、簡単に蹴散らせるだろ」
「・・・優しいね、ライは」
シオンは、ライから貰った桃色金剛の銀鎖を首から外すと、ライに差し出す。
「返すね」
「それは、お前にやったものだ。返す必要はない。俺には不要な代物だ」
「・・・名前、呼んでくれないね」
シオンの瞳から流れ出す雫。
そして、銀鎖もシオンの掌から溢れ落ちる。
すかさず、ライが銀鎖を捕まえ、握り込む。
「ほらね。大事なものなのでしょ?」
シオンが指笛を鳴らす。
飛んで来たレモンが、いつも通りシオンの肩に止まる。
少し困った素振りを見せたレモンは、慎重にシオンの背に回り、翼を広げ、シオンと一緒に夜空へと舞い飛んで行った。