君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する
「俺の事知ってるんだ?」
「・・・氷剣士のライでしょ、貴方、有名人だもの。こんな所で何を?」
「魔王城に喧嘩売りに行く途中だったんだけど、近道にこの森を抜けようと試みたら意外と奥深くてさ。野宿しようと矢先に良い湯湯婆が転がってたから、ついお邪魔させて貰ったって訳。そっちは?」

ぶん殴りたい衝動を堪え、シオンは冷静に脳を動かす。

ーーーー落ち着け私。とりあえず、こんな喧嘩っぱやそうな危険な奴、魔王城に踏み込ませるのは危険だ。

「私はシオンと申します。恥ずかしながら道に迷っておりました。あの、魔王城に向かってらっしゃるとの事ですが、何が為に?」
「囚われの姫をお助けに」

囚われの姫?
と聞き、シオンはサクラコの事を思い浮かべる。
彼女曰く、家での生活にうんざりし家出してきたと言っていたが、まさかお姫様だったとは。
サクラコを返せば、この剣士も魔王城には用は無くなり、引き返してはくれそうだが・・・生憎、サクラコは返してやれない。
何せサクラコは、魔王の番である。
契約の儀式も無事先日、終えたばかりだ。

正直、煩わしい案件ではあるが、お給金が良い分、関わってしまった以上、魔王直下警備隊として放置は出来ない。
どうにかして、剣士にサクラコを諦めさせなければ。

「剣士様!お願いがございます」
「何?」
「どうか私を、剣士様の旅に同行させて下さいませ」
「その動機は?」
「動機?えっと、ん~・・・あっそうですっ私が貴方を好きだからって言うのどうですか?」
「明らか今、考えた動機だよな、それ。じゃあさ、毎晩、俺の抱き枕になってくれるってのなら、同行を許可してもいいよ?」

こんの破廉恥剣士め。
魔族と人間の平和の為、シオンは覚悟を決める。

「操だけは守りますから」
「せいぜい俺に奪われない様に防衛がんばって」
「無理強いしたら、さっきみたいに頭突きかますだけです」
「あれ、まじで痛かったわ、どんな石頭してんだよ」


第一話「剣士様は抱き枕を所望する」終


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