君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する
「ライ、確認事項だけ言わせて貰う。今のシオンは魔族だ」
「人間だろうが魔族だろうが、どっちでも構いやしないさ」
「ユキトの記憶が、シオンに戻る事は決して無い」
「むしろ有難いよ。シオンに、ユキトの時の記憶は必要ない」
「それと、俺の血で甦った影響なのか、シオンは俺の事を凄く慕ってくれている。今はまだ、シオンにとって俺の存在の方がライより大きいだろう」
「それは、うん、まぁ分かってるつもりだ。信頼回復を含め、口説く所からまずは頑張ってみるさ」
「最後に。ライ、許すのは今回一回のみだ。次、シオンを傷つけて泣かす様な真似をしたならば、二度とシオンへは会えないと覚悟しておけ、分かったな」

黒い迫力を纏った笑顔でヒカルは言う。
現魔王が放つビリビリと地肌まで感じる緊張感に、ライも自分の覚悟を込めた漲る声で返事をする。

「御意に」

ライの答えに満足したのか、ヒカルの雰囲気は和らぐ。

「ではライ、日の出と共にシオンの所に向かおうか。我々も一緒に行く」
「我々?」
「俺とサクラコ。近い内に王都に向かい、サクラコの父と母にも挨拶をしたいと思っていた所だ」
「嫌だ!絶対に行かないから!!ヒカル君の裏切り者!!」

大人しくライとヒカルの会話の行方を見守っていたサクラコだったが、自分の話題が出た途端、ヒカルの背から飛び出し脱走を図る。
だがヒカルは脱兎を許してくれず、簡単にサクラコはお姫様抱っこで囚えられていた。
パタパタと、ヒカルの腕の上で暴れるサクラコ。

「あの姫様、俺が言うのも何ですが、一度王都に戻られ、ご自分の口から王や王妃様に状況を説明された方が宜しいかと思うのですが。とても、姫様の身を案じておられます」
「私は、あの人たちのお人形で居るのは御免なの!仮面を被った生活になんて戻りたくない」

王から聞かされていたのは、淑やか穏やかなで笑顔が可憐なお姫様。
けれど今、ライの目の前にいるお姫様は、じゃじゃ馬感たっぷりの元気な女の子だ。
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