君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する
泣き出してしまいそうなサクラコを慰める様に、その頬にヒカルは優しく口付ける。

「大丈夫だよサクラコ。俺も一緒に行くんだし。王様達は、サクラコが好奇心旺盛の腕白姫だと知らず、ただ、世間知らずの淑やか麗しい可愛い末姫が消えたと言う事で、本当に心配で心配で仕方がないだけなんだ。一度、王都に戻り、元気な姿を見せてあげよ、ね?」
「ヒカル君と離れるのは、絶対に嫌だからね」
「そんな事にはならないよ」
「・・・わかった、一度戻る」
「うん、良い子だ。ではライ、今夜は部屋を用意させるから、そこで休んでくれ」

再び赤い魔鳥が窓から入って来て、ライの肩に止まる。
生意気な視線でライを見据えたのち、こっちだ!とばかり服を乱暴に掴み引っ張って行く。

「ライ、シオンへの詫びの言葉、ちゃんと考えておきなよ」
「あぁ、そうさせて貰うよ。シオンがユキトだと認識した途端、愛しさ倍増で少し緊張してきた」
「とりあえず、頑張れ、とだけ応援させて貰うよ。シオンは俺にとっても可愛い女の子だ、幸せになって貰わないと困るからね」
「・・・ヒカルは、姫様の幸せだけを願って愛でておいて下さい。シオンの管轄は俺がする」
「キュイッ!」
「分かったって、そんな強く引っ張るな、服が破れる」

赤い魔鳥に誘導されるまま、ライはだだっ広い白い部屋を後にして行く。

「あらま、ライ君ってば心狭いね。シオンちゃん大変だ」
「だな。では、ライの言う通り、サクラコを沢山愛でさせて貰おうかな」
「こーら、ヒカル君。さっきから負けちゃってるよ宿命に。頑張って抵抗するんじゃなかったの?」
「そうだった、油断するとつい、サクラコを可愛がりたくなってしまう。おそろしい宿命だ」
「というか、本当に城に戻らなきゃ駄目なの?」
「煩わしい事は早めに処理しておきたいんだ、いつまでも王様に訝しげられる俺の立場にもなってくれ。なんで姫様って立場のサクラコが俺の“運命の番“何だよ」
「私に言わないで、そもそも私も見つけたのはヒカル君が先なんだからね」

ヒカルとサクラコ。
運命の番同士ではある、のだが。
縛られるのが嫌いで、運命の番と言う宿命に逆らいたいが逆らえなかったヒカルと、運命の番なら仕方ないと開き直り、むしろ王室から離れられる言い訳に使ったサクラコの、少し縺れ気味の夫婦だったりする。


第九話「剣士と魔王、時々姫」終

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