君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する

第十一話「おかえり、ただいま、リスタート」


まだ少し薄暗い明け方。
小熊は大の字でスヤスヤ眠り、親熊の腹ではシオンがもふもふの毛並みに顔を埋めて眠っている。
静かに近づくライに親熊が気付き、多少非難する様なじとり目がライに向く。

「シオンをありがと、世話になった」
「ガウ」

小声でお礼を述べれば、親熊も小声で返事を戻す。
ライは、眠っているシオンを掬い抱き上げる。
ライの肩にシオンの頭が寄りかかる。
その顔を覗き込めば、まだ微かに頬が濡れ、泣いた後がはっきりと伺える。
四年前「行って来ます」と口付けをし別れ、それっきり途切れた温もりを今、自分は確かに抱えている。

森の外で待機して貰っているヒカルとサクラコの所に早く戻るべきなのだろう。
けど、もう少しだけ、胸に湧く想いが落ち着くまでシオンと二人で居たかった。

大きな大木に背を預け、しゃがみ込む。
ライの腕の中には、シオンが寄りかかり収まっている。

「ただいま、ユキト。それと、おかえり」


*****


シオンは息苦しさで、微睡から意識が浮上する。
酸素が熱くて呼吸が出来ない。
口の中も違和感、舌に何かが張り付いて遊ばれている感覚。

自分に何が起こっているのか分からず、瞼を開ける。
驚きの余り、シオンは歯を噛み締めてしまう。
ライは予想していたのか、舌を噛まれる前にシオンの口から素早く離れる。

「おはよ、シオン」
「な、な、な、なにしてっ」
「まだ足りない」

言うやいなや、迷う事なく再びシオンと深い口付けを交わし始める。
執拗な蕩ける口付け。
強引に口内に押し入ってくる癖に、荒らし方は相も変わらず優しい。

昨日は突き放しておいて何なんだ。
と、夜通し泣くはめになったライの言動と、今行われている甘美な所業の余りの事態落差に、シオンの頭は大混乱を起こしていた。

酸素不足で抵抗もままならず、シオンは、眼前に居る諸悪の根源を、ただ見やる事しか出来ない。

「シオンは、俺を煽るの本当に上手だな」
「・・・はぁ、はぁ、色魔剣士」

有象無象に口内を遊び尽くされ、満足したのか、ようやく解放される。

シオンは目線を動かし、取り敢えず状況の確認を図る。
一晩中お世話になった親子熊が居ない。
そして今、自分はライに抱き寄せられ、離して貰えずに居る。
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