君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する

第十二話「魔王様と姫様の出会い」

運命の番。
いづれ自分が出逢うであろう、魂の伴侶。
瞳が重なった瞬間に恋に落ち、自分では抑えきれない愛しさが溢れ止まらなくなる存在。

父から寝かし付けに聞かされた話に、幼きヒカルは、くだらないな、と鼻で笑う。
そして父に向かい、小馬鹿にした様に自信満々に言う。

「そんな運命、もし出会ったとしても知らんフリで無視してやるさ。そもそも、俺が誰かに夢中になるなんて、まずあり得ないね」

魔王の息子として、周りから可愛がられ慕われ警護され、常に誰かと一緒に行動しなくてはいけないヒカルにとって、これ以上の縛りは、本当に勘弁して貰いたい事だった。
伴侶を迎えるとしても、それは自分で選り好みし、最適な相手を見つけるべきだと考えている。

「ヒー君よ」
「その呼び方止めてくれ、父さん」
「ふっ、諦めるのだ息子よ。魔王の血統を継いでしまったお前に、それを回避する術はないのだよ。愛着、執着、女々しさ、理性は制御不能になり、よく分からん幸福感情に悶える日が、お前にもいづれ訪れるのさ」
「止めろー!!変な情報を息子に植えつけんな!!」


*****


父は大袈裟にわざと言って、自身で遊んでいただけだと思っていた。
なのに、瞳が重なった瞬間に「こいつは俺のだ」と歪な感情に支配された。
とろとろに理性が溶かされ、心が幸せで満たされていく。
可愛くて、愛しくて、恋しくて、本当に、よく分からん幸福感情に悶えた。
すぐさま悟る、あぁこんな分厚い馬鹿でか感情からは、絶対に逃れられないなと。

業務を少し休憩がてら魔王城を抜け出し、ラビア国を適当に散歩している最中、立ち寄ったうどん屋で麺を啜る少女に、ヒカルは一瞬で恋に落ちていた。
サクラコもサクラコで、突然の美男子から注がれる凝視に、中々次の一口を啜れないでいた。

「あの、何か?」
「だぁ、もぉ!!無視なんか出来る訳ねぇじゃん!!!娘さん、名は!?」
「え、あ、サクラコです」
「サクラコ、頼む、俺を拒絶して欲しい。俺じゃ制御が効かない」
「えっと、とりあえず、うどん屋さんじゃ迷惑だから、外で話さない?」

勘定を済ませうどん屋を出る。
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