君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する
目的地はないが、適当に歩を進めながらヒカルはざっくりとサクラコに、今、自分の身に起こっている事を説明する。

「なるほど、私がヒカル君の運命の番だと」
「・・・」
「ヒカル君、確かに格好いいけど、私の方はそこまで煩い感情をヒカル君に向けてはないのよね」
「・・・」
「ヒカル君?聞いてる?」
「サクラコ、可愛いな、好き」

誰が通るか分からない道端で、ヒカルはサクラコを抱擁し口付ける。
ゴン!!っとサクラコは、頭突きをヒカルにかます。

「・・・申し訳ない、助かった。危うく道端でサクラコと襲ってしまう所だった」
「本当に自分を見失う様ですね、よく分かりました。なら、私と金輪際関わらなければ問題解決なのでは?ご自分で伴侶を決められたいのでしょ?私はこのまま先に進みますので、ヒカル君はうどん屋に引き返し、お腹を満たして来て下さい、それでバイバイです」
「多分、それは出来ない」
「なぜ?」
「今の俺、サクラコと離れたら恋しすぎて泣くと思う」
「子供ですか」
「はぁ、サクラコがうどん屋なんかに居るから・・・」
「先に居たの私で、後から来たのがヒカル君です。ヒカル君の運命に巻き込まれたのは私の方だと思います」
「うん、だな、わりぃ。サクラコが決めて、俺と共に居るか、俺を・・・捨てるか。やべ、泣きそ」
「もぉ、良心に刺さる言い方しないで。いいですよ、ヒカル君と居ます」
「随分、あっさりしてるな、いいのか?」
「ちょうど行く宛が無くて、これからどうしようかって思い悩んでいた所でしたし、ある意味、私も切羽詰まっているもので。貴方と一緒に居させて下さい、ヒカル君」

ちゅっと、サクラコの方から、ヒカルの頬へ口付けが贈られる。
喜びが高揚し、ヒカルの頭から角が飛び出る。

「ヒカル君って魔族だったんだ。角も格好いね」
「感情昂るから余り褒めるな、抑えるのが辛い。サクラコ、俺は出来る事なら、運命に理性を奪われる事なく、俺の意志として君を愛でたい。俺がだらしなくなったら、全力で止めてくれ」
「了解」

お互いの出自を知り、愕然とするのはもう少し会話を弾ませた後での事。


第十一話「魔王様と姫様の出会い」終
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