君とリスタート 剣士様は抱き枕を所望する
最終話「王都であれやこれ」
ラビア城、応接室。
王、王妃、サクラコ、ヒカル、ライ・・・とサクラコの婚約者と名乗った男がその場に揃っている。
「まずはライ、この度は感謝する。我が娘を送り届けてくれた事に」
「では、謝礼は頂戴しましたし、俺のお役目はここまでと言う事で。あとは身内で話し合って下さい。俺はこれで失礼させて頂こうかと、待ち人も居ますんで」
王の礼の言葉も、ライは軽く流す。
それよりも、めんどくさそうな予感がし、ライはこの場から早々に離れてしまいたかった。
が、ヒカルに肩をガシっと捕まれ、黒い笑顔が向けられるーーーー逃げんなよ、と。
*****
王都では、ちょっとした賑わいが起きていた。
“氷”の剣士のライが、行方知らずとなっていた末姫様を連れ、訪れていると。
ライ、ヒカル、サクラコの三人は、ラビア城へと出向き、シオンは一人、本来の任務である「魔族の好感度調査」に励んでいた。
現在王都は、人6割、魔族4割で成り立っている事もあり、魔族への好感度はかなり良い。むしろ、今回尋ねた人の中で、魔族を悪く言う人は一人も居なかった。
唯一、尋ねた人が連れていた子供が「魔族は色んな事が出来て狡い」と言っていたぐらいだろうか。その子供は両親から頬を抓られていた。
王都に辿り着くまでは長旅で色々あったが、調査事態は滞りなく進み、シオンは調査報告書をレモンに託し、任務終了とした。
ひと段落着いた所で、昼食を何にしようか探していたシオンの元に、ちょうど美味しそうな香ばしい匂いが届き、釣られるがままにそのお店へと足を向けた。
「いらっしゃい」
溌剌とした声の女主人が、シオンを出迎える。
家族向けの広々席もあるが、シオンは一人掛け用の長机の端の席へと座る。
どうやら焼き鳥を売りにするお店らしい。
「新顔だね」
「えぇ、ちょっと仕事で王都へ」
「見る所沢山あるからね、どうせなら観光しておいきよ・・・って、お嬢さん、その首の」
女主人がシオンの銀鎖に目を止めた。
「いや、何でもないよ。そんな訳ないさね。ちょっと、知り合いが常備している代物に似ていた物だったもので、ついね。で、お嬢さん、注文はどうする?」
「そうですね、ではお勧めで」
「うちのはどれも絶品だよ、ちょっと待ってな」
豪快な笑みを残し、女主人はその場から去っていく。