君とリスタート 剣士様は抱き枕を所望する
「ラビア王、王妃様。もっと早く伺うべきだったと反省しております。誠に申し訳ありませんでした」
「お父様、ヒカル君は悪くないの!?ヒカル君は何度も私に王都へ戻る様に促してくれていたのよ、それを私が嫌々断っていただけなの」
サクラコが慌てて擁護するも、ヒカルは、サクラコの父と母である王と王妃に向かい、丁寧に頭を下げる。
「顔を上げてくれ、ヒカル殿。元々は、私達がサクラコを追い詰めたのが原因。寧ろ感謝しているぐらいだ、娘を保護してくれた事に。そして、娘が世話を掛けてしまった旨、父として謝罪させて欲しい」
「勿体無いお言葉です。俺はただ、サクラコを愛でさせて頂いていただけですので。そして願わくば、これからもと思ってる所存です」
意思の強い確かな瞳で、ヒカルは王へと告げる。
王も、表情は変わらない。
サクラコから手紙が届いた時点で、既に覚悟は決まっていたのだろう。
「サクラコの人生だ。私達がでしゃばるつもりはない。それに、また所在が分からなくなってしまっても困るからね。どうやら私達の可愛い淑やか姫は、とんだ跳ねっ返り娘だった様だ」
「っお父様」
嬉しそうに父に抱きつくサクラコ。
これで一件落着かと思いきや・・・。
「俺はこんなの認めない」
突如、サクラコの婚約者であるユウイチが、挑発的な視線と言葉をヒカルに向ける。
「サクラコ様と俺は既に、風呂を一緒に入った事もあるし、一緒に夜を過ごした事もある中だ」
応接室の空気が急に寒く澱み、窓から注がれていた光は途切れる。
空が暗雲立ち込め、稲光が走り出す。
「ヒカル君、落ち着いて!!ちょ、ユウ君もいきなり何言ってんのっ!!」
「本当の事だろ。サクラコ様の唇を初めて奪ったのも俺だし」
「お願い、それ以上ヒカル君を煽らないで!!そもそも全部子供の頃の話でしょ!!?」
「可愛いサクラコ様を、悪鬼魔王、貴様などに誰がやるか!!」
ユウイチが、これ以上ヒカルの逆鱗に触れる言動をしない様に必死に嗜めるサクラコ。
なんてったって、この後、怒れたヒカルの溺甘暴走を受けるのは自分なのだ。
近くで、その様子を見ているライは冷静にこう思うーーーー魔王に面と向かって喧嘩売れるユウイチは、ある意味勇者だな、と。