君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する

「にゃいのばぁか」
「うん、うん、切ないね」

5剣士の一人“猫”の名称を持つ女剣士・カナが、シオンの隣の席で一緒に酒を飲んでいた。
シオンは先程からずっと、うにゃうにゃ喋りで呂律が回っていない。

「わらしは、にゃい、好きだけど、にゃいは、ちがうの(訳:私はライが好きだけど、ライは違うの)」
「そうよね、好きな人が、自分を見てくれないのって辛いわよね」
「にゃいにや、好きな人いてね、わらし、そっくい、なんらって。にゃいは、しょの人が、わしゅれられないかや、わらしにかまってくゆし、わらしの事をね「しゅき」っていうにょ(訳:ライには好きな人が居てね。私にそっくりなんだって。ライはその人が忘れられないから、私に構ってくるし、私の事を「好き」って言うの)」
「ほんと、昔の女って厄介よね、さっさと忘れて次の恋に進めばいいのにって私も思うわ。本当に好いた男だと、体の関係だけじゃとても切なくて苦しいのよね」
「にゃいは、えっち、らけろ、わらちとね、いっちぇんはこえにゃいの(訳:ライはエッチだけど、私とね一線は超えないの)」
「あらそうなの、それじゃ、とても苦しわね。好きな男とはやっぱりどうしても、繋がりたいと、思ってしまうものよね、心も、体も」
「・・・ぅん。ねもね、やっぱい、いっちょいちゃいの(訳:うん。でもね、やっぱり一緒に居たいの)」
「そうね」
「まちゃ、ぽい、しゃえゆのかな。ややな(訳:また、ぽい、されるのかな。嫌だな)」

頭を上下左右に揺らしながらも頑張ってお喋りしていたシオンだが、限界を迎え、女店主が事前に用意してくれていた枕に頭を落とした。
カナは、毛布をシオンの肩へと、そっと掛ける。

他の席で酒を飲んでいたカナの仲間の男が側に寄り、呆れ口調で言う。

「お前、この彼女が言っていた言葉、よく理解出来たな」
「何となくよ。ほんと、恋する子って、意地らしくて可愛いわ。にしても、こんな可愛い子の恋心を弄ぶなんて、許せないわね、その相手」

カナがシオンの髪を撫でれば、シオンの寝顔がフニャリと緩む。

「あら、可愛い」
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