君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する
「カナさんでしたっけ?ごめん、その話題止めてあげていい?本人が一番、思い悩んでるから」
「そう言う所は可愛いよねライ君。ははっ」

ライとカナの会話を聞いていたヒカルとサクラコが口を挟み、愉快そうに笑い出す。

「笑うな。俺だって出来るもんならそうしてる。だけど、一つに繋がった瞬間に幸福と快楽で自身を見失い、その結果もし、シオンを傷付け嫌われでもしたらと考えると、どうしても最後の一線だけは踏み留まってしまうんだ」
「まさか、本命には臆する奴だったとはね、私も笑いたいわ」

今夜は酒のつまみに事きれなさそうだなと、カナは上機嫌に手元の酒を一口呑む。

「とりあえず、シオンの面倒見てくれてた事には感謝するよ、カナ。一人で心細い思いさせてたんじゃないかと心配だったからさ」
「随分と過保護なのね。それよりそのお嬢さん、魔族の娘よね。相当強いでしょ」
「分かるのか、流石だな」
「可愛くて強い子は大好きだもの。どんな可憐な動きを披露し、魅いせてくれるか、想像するだけでも楽しいわ。お持ち帰りして、一戦、手合わせをお願いしたかったんだけど、仕方ないわね」
「それは諦めろ。シオンはお前の様な戦闘狂と違って、力比べに興味はないよ」
「ライと同じって訳ね」
「俺なんかよりも、遥に強くて優しいよ、シオンは。じゃ、俺達はこれで」

ライは片手だけでシオンを抱え、もう片手でシオンが頼んだであろうお代以上の通貨を台に置く。

「スオウさん、今日の所はこれで失礼します、お騒がせしてすいませんでした」
「いいさね。銀鎖を見た時は、まさかとは思ってたけど、本当にまさかだったとはね。また、そのお嬢さん連れていつでもおいで」
「是非。そん時は、こいつに酒を勧めるのだけは勘弁して下さいね」
「あぁ、覚えとく」

ヒカルとサクラコも笑顔で軽く会釈をしたのち、お店を後にするライに続く。
四人がお店を出て一呼吸後に、盛大な発狂が、焼き鳥店から響き渡っていた。
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