君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する

第三話「真面目魔族は隠し事が出来ない」

森を無事抜け出し、今夜の宿を求め訪れた村は、石で有名な観光地であった。
天然石から宝石、魔術石。
願い事や欲しい能力、財力の誇示などを目的に観光客が多い。
石との相性を鑑定してくれる占い師も居る。

ライとシオンは、宿の予約を終え、村を見て回っていた。

「一部屋でも空いてる部屋が残ってて良かったな」
「・・・そうね」

観光地だけあって、どの宿も部屋は満室。
何軒目かの宿で、格安小部屋をなんとか確保する事が出来た。
分かり易く、シオンの表情は不服げだ。

「抱き枕になるって約束、忘れてないよな?」

ライは、にた~と不適な笑みを浮かべ、揶揄い口調で尋ねるも、シオンは無言で一睨みするだけだった。

「女将さんには、布団は一組でいいって伝えておいたから」
「ちょっ、変な勘違いされちゃうじゃない!?」
「使わないのに用意させるのは宿の方に申し訳ないからな~。なんなら、抱き枕要因だけでなく、勘違いじゃなくさせても俺は良いんだけど?」

横に居るシオンの腰を引き寄せ、己の懐へと抱え込む。
ライは眼前にあるシオンの顎を掬いあげ、女性受けする妖艶な笑顔を携える。

「揶揄うな!!私には敬愛する尊といお方が居る!他を当たれ、破廉恥剣士っ」

シオンは拳に魔力を溜め殴ろうとした時・・・。
強盗よ!誰か捕まえて!!と女性の声が響いた。
ライに遊ばれている場合ではない。
魔力を込めた拳をそのままに、ライから押し離れ、声が鳴った方へと体を向き直す。

刀と袋を持った男二人が、ちょうどこちらに向かって走ってくる。
気配を察するに、魔族と人間の二人組だ。

「たく、欲しいもんあったら、働けっての。悪いシオン、ここは俺に良いカッコさせてな。その拳の使い所は、今回はナシって事で」

殆どの観光客達は、端っこに避けたり、他の店に避難する中、堂々と道のど真ん中に居座るライとシオン。
通行の邪魔だったのだろう。
強盗の二人組は、脅しなのか本気で殺傷目的なのか、乱暴に刀を振り回し始め「どけ」と叫ぶ。

ライも、やれやれと思いながら、腰の刀に手を掛ける。
勝負は一瞬で付いた。
鞘のまま、ライは男達の脛を殴打。
男達は刀も袋も手放し、脛を押え、情けない声を出しながら地面に転がっている。
袋から溢れるは、綺麗な輝きを放つ色取り取りの石。

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