君とリスタート  剣士様は抱き枕を所望する
「はぁ、はぁ、あの、ありがとうございます」

走り寄って来た女性が、息を切らしながら礼を述べる。
女性は相当怖い思いをしたのだろう、小刻みに体を震わせている。

ライは溢れた石も袋に戻し入れ、女性に渡す。
袋を受け取り胸に抱えると、女性は安心したかの様に息を落としていた。

「うちの商品なんです、良かった、取り戻せて。本当に、ありがとうございます」
「災難だったな。怪我はないか?」
「はい」

今だ震えたままの女性を労わる様に、ライは女性の髪を撫でる。
女性の頬に朱色がさす。

己の信者を着実に増やしていくライを横目に、シオンは指笛を鳴らす。
すると檸檬色の魔鳥が空から舞い降り、シオンの肩に止まった。
魔鳥は嬉しそうに、シオンに頬擦りしている。

「そいつ、シオンの鳥か?」
「えぇ」
「その鳥って、魔王直下警備隊の社員が相棒として従える鳥だよな?」
「そうね」
「ま、なんとなくそんな気はしてたけどな」

シオンは魔族の強盗犯のを縄でぐるぐる巻きに縛り上げると、縄の先を魔鳥に咥えさせる。
魔鳥は大きく翼を広げ、再び強盗犯を連れ空へと飛び立つ。
その際も、強盗犯の男からは情けない声があがった。

「小さい鳥の癖に、よく運べるな。重力的に不可能だよな、普通」
「警備隊で訓練されてる鳥よ、鍛え方が違うわ」
「鍛え方の問題か?魔物の鳥に理屈を求めても仕方ないか」

人間の方の強盗も、村の役人がすぐに駆けつけ、連行されていった。

「あの、改めてありがとうございます。何かお礼をさせて頂けませんか?宜しければなのですが、美味しい酒場を知ってるんです、そこで是非お礼を」

お礼と言うよりも、別の目的が隠れていそうなお誘いだ。
男女で酒を交わす約束をする、それは夜の営みの誘いも意味している。

「私、一人で寄りたい店あるから、じゃぁね剣士様」

はい、いいえ。
お返事はお好きにどうぞ、とばかりにシオンは来た道を戻る。
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